「離婚」を会社に伝えず120万円“罰金”

このように“スネに傷を持つサラリーマン”は決して少なくないようだ。他にも、似た案件の相談がマイナンバーの本格稼働の時期が近づくにつれ、確実に増している。

では、実際にはどんな問題が想定されるのだろうか? 筆者が思い付くまま列挙してみた。

(1)家族手当の不正受給がバレる

家族手当を支給している会社は、「扶養家族であること」を支給要件にしているところが多い。会社は、扶養家族かどうか、現時点では扶養控除申告書に自己申告で記載した内容で判断しているのが一般的だ。

つまり、従業員が「妻は扶養家族です」と自己申告してきたら、会社はそれを信用するので、それ以上の調査まではしていないだろう。

もちろん、扶養家族から外れていることがバレる場合もある。それは大抵の場合、税務署からの指摘が発端だ。税務署から「貴社の従業員の○×さんが奥さんを扶養家族に入れていますが、所得が超過している」といった連絡があった場合だ。このように税務署から指摘されるのは希だったが、マイナンバーが導入されると“ガラス張り”になり……発覚する確率が高くなると考えるのが妥当だろう。

もし、Aさんのように不正受給していたことがバレたらどうなるのか?

実は、怖いことが待っている。「不当利得の返還請求権」は時効が10年間あるので、会社は過去に遡って返還を請求できる。例えば、家族手当の不正受給額が月に1万円だった場合は、120万円という金額になる。

また、従業員本人が過払いの事実を知っていたということであれば、会社は過払い分に利息(年5%)を付けて返還させることもできる。もちろん、家族手当の返還のほかに、就業規則による処分が考えられる。

(2)副業がバレる

では、もう1つの内緒の副業はどうなるのか。

最近は、一部の企業で従業員が副業を兼業することを認める動きもあるようだが、全国規模で見れば、ほとんどの会社の就業規則には、それを禁じる規定が盛り込まれているはずだ。

その規定に反すると、どんな処分がありえるのか、そのあたりは微妙だ。

懲戒処分には、けん責(始末書をとり将来を戒める)、減給、出勤停止、昇給停止、解職、諭旨退職、懲戒解雇などがある。

業務に支障のない軽微な違反だった場合に懲戒解雇まではしにくい。しかし、会社の信用を失墜するような仕事の場合には、懲戒解雇だってありえる。

過去の判例の中には、キャバレーなどの風俗で副業した従業員を解雇した事案で解雇は有効とされた判例がある。理由は、深夜の仕事(会計担当)で本業に支障が出たことと、キャバレーで働くことは副業の域を超えているという判断だ(小川建設事件 労働判例397号 1982年)。