朝型ばかりが注目される昨今だが、夜型は本当に非効率なのか。デキル朝型とデキル夜型の行動を徹底分析する。
効率化の第一歩キャパを知る
今回、朝型の代表としてメーカーのビジネスマンである沢渡あまねさん(ペンネーム)、片や夜型の代表としてCM制作会社AOI Pro.エグゼクティブプロデューサーの神吉康太さんにご登場いただく。38歳の沢渡さんは会社の購買関係の現場のリーダーを務めていて、45歳の神吉さんは執行役員も兼務する幹部社員であり、2人とも日頃の仕事の実績について周囲から高い評価を得ている。
その2人に共通しているのは、若いときの激務からいまの時間活用のスタイルを築き上げていることだ。いまでは朝型の沢渡さんも、20代前半のときには深夜残業を厭わない超夜型人間であったことを認めている。神吉さんも入社当初は資料集めから制作現場の“ロケ弁”の手配まで下積みの仕事をこなしながら、独自の効率的な時間の使い方を編み出してきた。
「何が効率的で、何が非効率なのかを判断できるようになるためには、いろいろなことにチャレンジすることが重要です。もちろん、そのなかでは失敗することもあるでしょう。でも、その失敗を経験することによって、どのような行動が効率、非効率につながっていくかがわかる。人に教えを乞い、すぐに身に付くというものではないのです。特に体力のある若い頃は徹底的に働いてみることをお勧めします」
こう語るのはプルデンシャル生命保険に入社後わずか5年で営業マン最高位であるエグゼクティブ・ライフプランナーに認定されるなどトップ営業マンとして活躍し、現在は営業やタイムマネジメントについての研修や講演を行っているアイ・タッグ代表取締役の小林一光(いっこう)さんだ。
小林さん自身、日本交通公社(現・JTB)に勤めていた20代の頃は、ピーク時ともなると担当しているツアーが重なり、朝から晩まで目一杯働いていた。「そうしたなかで、数多くの仕事をこなすためにはどうしたらよいのか、自分なりに工夫を積み重ねてきたのです。タイムマネジメントを含めて世の中には、これといった正解のないことばかり。まず自分でやって、その結果を見て改善や工夫をしていくことでしか、効率的なタイムマネジメントは身に付きません」と小林さんはいう。
また、沢渡さんも神吉さんも、仕事の手順について考える時間をきちんと割いていることも目を引く。それも、1日の仕事が終えた後に30分から1時間ほどかけてその日のことを振り返りながら、明日の「To Do」を含めて仕事の手順を組んでいる。実はその手順づくりができるのも、この仕事をするときにはどのくらい時間が必要かを把握できているからなのだ。
「目標を達成していくためには、自分のキャパシティを知ることが大切です。上司に頼まれたときにどのくらいの時間がかかるのか、どこまでだったらこの仕事を回せるのかがわかっていれば、結果的に迷惑をかけることもないでしょう。では、そのキャパシティを知るためにはどうするかというと、『できる、できない』とやりもしないで勝手に決めるのではなく、まずはやってみること。その際に1つひとつの仕事にかかる時間を計測しておくのです」
この小林さんの話を聞いて「なるほど」と思うのは、沢渡さんの“早かろう、悪かろうのレベルの合意”というメソッド。詳しくは【後編】をお読みいただきたいのだが、上司に対して仕事の期限とクオリティについて、沢渡さんがその場で明示できるのは、まさに小林さんが指摘する自分のキャパシティを把握しているからなのだ。