先般の総選挙を受け、スーチー政権の誕生がほぼ固まった。米国をはじめ、英国、オーストラリア、日本、中国、韓国など各国政府は、選挙結果への祝辞を一斉に電話でアウンサンスーチー女史へ伝えた。

民政移管後のテインセイン政権下において、米国政府やEU各国は、経済制裁の一部解除を含む飴と鞭による柔軟な政策で、ミャンマーの民主化を着実にバックアップしてきた。同時に、USDP政権とのパイプを深めながら、自国企業による投資促進の環境整備を着々と進めてきた。日本政府も、軍事政権時代に二国間関係が希薄になり、中国一辺倒となったミャンマーへの投資プレゼンスを上げるために、官民あげての支援体制を構築、いち早く累積債務問題を解消に導き、ティラワ経済特区をはじめとして、日本企業の進出環境を整備した。

日本の支援で開発の進むティラワ経済特区

また、その他通信分野、交通インフラ分野、金融分野などにおいて、他国との競争を制し、大型投資案件を成就させてきた。租税条約の関係から、日本からの直接投資額の大部分がシンガポール経由での直接投資額に計上されるなどの統計上の齟齬はあるにしても、日本のミャンマーへの投資プレゼンスは、USDP政権下で明らかに高まり、フロントランナーとなったと評価できる。

スーチー政権の誕生により、彼女と強いパイプを持つ欧米諸国やインドなどからの投資・進出が加速するものと思われる。もちろん、NLD政権の政権担当能力や経済政策への不安視の声もある。少なくとも、主要なNLD幹部は、軍政時代に長く投獄されていた人たちも多く、国際政治経済情勢に疎いのは事実である。もっとも、NLDが選挙前に発表した経済政策を読む限りにおいて、基本的にはテインセイン政権が進めてきた経済開放政策を踏襲する内容である。憲法改正や少数民族問題など困難な課題もあるものの、NLD政権においても経済政策の方向性には、前政権との大きな変化がないものと予想される。USDPの経済顧問は元々NLDの経済顧問が就任して政策立案に携わったという経緯もある。

選挙結果を見極めてからミャンマーへの投資進出の決定をしようと準備を進めてきた米国勢やEU勢の投資が、今後加速するものと思われる。米国などがスーチー政権下で経済制裁の全面解除に踏み切れば、既に先行して進出を進めている米国以外のミャンマー投資の主要プレイヤーである日本、中国、タイ、シンガポール、韓国などによる投資も更に加速するだろう。