法則2:早期教育の効果は限定的

算数や数学は子供によって好き嫌いが分かれる教科だ。「苦手意識を持ってしまわないように」と、就学前から算数の早期教育に期待をする向きもあるだろう。

しかし、中室さんはこれを否定する。その根拠となっているのが、1960年代からシカゴ大学のヘックマン教授らによって開始され、現在も続いている「ペリー幼稚園プログラム」の調査である。このプログラムは、低所得のアフリカ系米国人の3~4歳の子供たちに質の高い就学前教育を提供することを目的にしており、就学前に読み書き計算などの学習をさせるものだ。

「ペリー幼稚園の子供たちは、ほかの子供たちに比べ、4~5歳ごろまでは学力レベル(IQ)がかなり高いものの、小学校入学前の6歳ではその差が小さくなり、8歳では差がなくなります。つまり、就学前の学力を上げても、効果は持続するわけではないのです」(中室さん)

だが一方で、ペリー幼稚園プログラムを受けた子供たちは、学歴、就職、年収などの面で、長期的にプラスの影響も受けているという。

「就学前教育で効果が持続したのは、『忍耐力』『興味・関心』『社会性』などといった性格的な特徴です。ここから見えてくるのは学習する中で忍耐力や好奇心などが培われ、その能力は大人になるまで持ち続けられること。そして読み書き計算の学力自体は効果があまりないということです」(中室さん)

忍耐力や好奇心などは大人になって社会的に活躍するのに重要な能力だ。早期の算数教育の目的は、子供が将来成功する力を付けるため、と割り切ってやるといいだろう。

→早期教育は学力よりも忍耐力に効果的