もめる予感があれば最初から弁護士に

税制面の対策が済んだら、遺留分に配慮しているかなどの法的なチェックを受けながら、遺言の下書きを作っていく。遺言書の作成や執行は、信託銀行や司法書士にも依頼できる。ただし、紛争解決を担当できるのは弁護士だけなので、「もめそうな予感がある場合は、はじめから弁護士に依頼したほうがいいでしょう」(武内氏)。下書きが完成したら、公証人役場で公正証書遺言を作り、保管してもらえば完璧だ。

とはいえ、「財産の相続の基礎となるのは、親の生き方や想いを受け継ぐ『心の相続』。そこがおざなりだと、どんな遺言書を作っても、もめる可能性は消えません」と内田氏は指摘する。

親の財産を相続できるのは当然と思わず、資産を残してくれたことに感謝する。子供を大事に育ててきた親の想いをくみ、他の兄弟姉妹の生活を思いやる。親が生きてきた中で大切にしてきたことを「家訓」にし、子や孫世代にも引き継ぐ……。こうした「心の相続」を、内田氏は「想続」と呼ぶ。

妻の親族間の話し合いに首を突っこんだりせず、情報収集や専門家へのコンタクトに励む。「君たちが小さかった頃の話を、改めてお義母さんから聞いてみたら?」などと、「想続」を促す気配りもする。そんな形で妻の手助けができれば、円満な相続の裏方として、妻に感謝されるかもしれない。

弁護士 武内優宏
法律事務所アルシエン共同代表、終活カウンセラー協会監修・講師。遺言作成、相続問題を得意とする。著書に『おひとり様おふたり様 私たちの相続問題』など。
 
税理士 内田麻由子
一般社団法人日本想続協会代表理事。相続対策、相続税申告を数多く手がける。著書に『誰も教えてくれなかった「ふつうのお宅」の相続対策ABC』(共著)など。
 
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