地元が鳥羽を再発見するきっかけに

ツアー客は年間で4000人ほど。地元経済を潤すほどではないにしても、鳥羽の人々に刺激を与えているのは確かだ。

海産物問屋の丸傳商店では、『鳥羽の台所つまみ食いウォーキング』をきっかけに、アワビの煮出し汁を使った「あわび醤油」を商品化し、売れている。

飲食店も営む丸萬亭では、旅館やホテル向けに製造していた菓子「真珠もなか」のパッケージを特注して、観光客の土産用に売り出した。

エコツアーで観光客と地元の人たちが触れ合うことで、元気も出るし、「自分たちが鳥羽を再発見する機会も与えてくれた」と評価されている。

参加型・体験型のエコツアーの風景。

江崎はエコツアーの理念をこう語る。

「鳥羽の魅力を伝えたいけれど、押しつけがましいのはいやです。全国で鳥羽だけが秀でているわけではありません。ただ、お客さんにはこの町に触れて、すてきな気持ちで帰ってもらいたい。そのためには、鳥羽の人たちもすてきでいてほしいと思うんです。私たちが両者の間を取り持つことで、お客さんのためにも地域のためにもなりたいと思います」

伊勢湾口にある菅島(すがしま)は、人口700人ほどの離島で、海女の多い島として知られている。エコツアーはこの小さな離島にも元気を与えた。オズが島の小学校と協力し、子供たちに島を案内してもらう「島っ子ガイド」を2007年から始めた。

当初、子供たちはひどく恥ずかしがって、観光客とまともに話しもできなかったが、2~3年経つと、子供たちが島のことを調べ、ガイドしながら客に話しかけるようになったのだ。小学校も総合学習の授業を使って協力した。それを見ていた親も、以前は「将来はどうせ島を出てしまうのだから」と菅島のことをあまり我が子に話さなかったが、積極的に教えるようになった。

「以前は、子供たちが島に魅力を感じているとはとても思えなかった」(江崎)が、彼らも大人たちも菅島を再発見したのだ。

低学年から高学年まで混じり合ったグループでガイドするが、1年生は写真を持ってきて客に見せたり、3~4年生は調べたことを紹介したり、5~6年生がガイド役を担当するなど、それぞれが力を発揮している。