私はきっぱりお酒もやめました

【飯島】横綱は弁解をしないから、マスコミのつくった悪いイメージが一人歩きしているのかもしれない。あまり知られていないけれど、安倍晋三総理大臣の母上である洋子さんが、モンゴルへ行った際も、道中の手配や案内役を引き受けていた。そういえば、安倍総理の自宅にも招かれたのですね。

【朝青龍】安倍総理と、日本のこと、世界のこと、いろいろとお話をすることが楽しいです。

【飯島】安倍総理と家族ぐるみの付き合いをしている人は、日本にだってそうはいない。そして、そういう関係性を横綱はまったく自慢しない。そこが素晴らしい。わたしと話すときも、自分のビジネスの陳情は一切ない。政治に近づいてくるビジネスマンの99%は、自分のビジネスのことしか考えてない人たち。この前、楽天の三木谷浩史氏をプレジデントの誌面で批評したのだけれど、政商とまでは言わないけれど、やはり公私混同というか、私利私欲が見え隠れする。国にとってプラスになる話ではなく、自分がプラスになるから規制緩和してほしいというのは、本末転倒の議論だと思う。横綱は自分のビジネスのお願いを私にまったくしない。モンゴル発展のために協力してほしいという話ばかり。母国の将来のことを真剣に憂いている。

【朝青龍】モンゴルでどんなに品質のいいものをつくっても、日本に送るためには中国の港を経由しなくてはいけません。その依存度は95%にも達します。北朝鮮、ロシアの港も利用できるようにして、交渉力や危機管理能力を上げる必要があります。

【飯島】モンゴルは、地政学的に日本よりもはるかに厳しい環境に置かれている。ロシアと中国という両軍事大国と陸続きであり、外交上のバランスをどうとるか。そういう意味で、物流を一国のみに依存している状態は変えたほうがいいという横綱の問題意識は正しい。ところで、さっき小耳に挟んだのだけれど、お酒をやめているんですか。

【朝青龍】そうなんです。3年前から。

【飯島】私もお酒を飲まないんです。深夜に何か大きな事件が起きたら対応しなくてはいけませんから。でも、あれだけ好きだったのに、なぜ禁酒したのですか。

【朝青龍】実は……。

 ※次回へ続く

第68代横綱・実業家 朝青龍
ドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ

1980年、モンゴル・ウランバートル生まれ。97年、日本の明徳義塾高校に相撲留学し、99年若松部屋(現・高砂部屋)に入門。2001年1月場所に新入幕。02年幕内初優勝。03年横綱昇進。10年引退。横綱在位42場所、幕内優勝25回(歴代単独4位)で、貴乃花、白鵬と並び「平成の大横綱」と称される。愛称は本名からとった「ドルジ」。
(撮影=奥谷 仁)
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