しかし、こうした特定の人物と関わりを深める場合、相手が失脚するなど、社内情勢の変化が気になるところだろう。まず注意したいのは、交流を持つ際には、その人の派閥と取られるような態度は取らないことだ。
「○○さんに一生ついていきます!」ではなく、「○○さんの仕事の仕方に関心を持っていました。勉強させてください」などと言えば誤解されずに済むだろう。もちろん、変化の波に呑み込まれないよう、自分なりの武器を持つことはなによりも大切だ。会社にとって貴重な人物であれば、大波が寄せても足元をすくわれずに済む。
同時に、派遣・契約社員やアルバイトなど、弱い立場の人間への配慮も不可欠。社内では、「足を引っ張る人をなくす」ということが重要だからだ。
「あの人って、上の人に対しておべっか使うけど、けっこう下の人に厳しいんですよね」などと上司に言われたらマイナスだ。常日頃から声をかけるなど、なにかあったときに応援してくれる人をなるべく増やしておきたい。
こうした戦略的な人脈づくりは、得意としない人もいるだろう。しかし、ここは割り切って考えたい。普段は寡黙で穏やかな俳優があるときは明るい道化役を演じたり、あるときは眼光鋭い悪役になったりするように、「職場という劇場の役者」として、本来の自分とは違う人間を演じていると思えば、居心地の悪さもなくなるはずだ。
もちろん、意識的に役を演じているとしても、それを快く思わない人間は必ずいる。
「アイツは役員に媚びている」などと陰口を叩いたり、足を引っ張る作為を施されたりしたらどうすればいいか。結論から言えば、鈍感になること。対応策はこれに尽きる。陰口を言う人間は、反応を面白がっているのだ。
「私はアンテナが低くて。周りで何か言われていてもまったく気づかないんですよ」と、かわしているうちに、相手は陰口を言うことがつまらなくなってくるはずだ。
こうしてつくった人脈はすぐに役立つわけではない。また、必要なときに果たして味方になってくれるかどうかもわからない。その点から言うと、投資と同じだ。だからこそ、できるだけ多くの人脈をつくってリスクヘッジをしておくことをお勧めする。
1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。6年間トップセールスを記録。情報誌「アントレ」編集長、転職事業部長など歴任。2005年に退社後、同社創立、代表取締役社長に就任。著書に『社内政治の教科書』ほか多数。東洋経済オンラインで「高城幸司の会社の歩き方」を連載中。