日本経済を立て直す政策はこの3つだ

国民向けのサービスである経済政策で行き詰まり、本当はアメリカ向けのサービスだったはずの安保法制は「戦争法案」のレッテルを貼られて、「日本を戦争に導く危険なリーダー」というタカ派イメージが増幅されている。

安保法制自体は60日ルール(衆議院で可決され参議院に送られた法案が議決されないまま60日が経過した場合、参議院が否決したものとみなす)から衆議院で再議決できるので、成立する可能性が高い。しかし、今の情勢で最終目的地である憲法改正までたどりつくことはありえないだろう。

公明党が主張するような“加憲”は小手調べでやるかもしれないが、自民党的な憲法改正案はまったく通らないと思う。というより、持ち出せないだろう。その話が出てきた途端に、「この政権にやらせるのは危険」という世論の強い反発が予想されるからである。

憲法改正が封じられると、安倍政権に次のアジェンダは見当たらない。今さら魔法が解けたアベノミクスでもなかろう。次のアジェンダが打ち出せない政権は、もはや詰んでいるに等しい。与野党に有力な対抗馬がいない状況でありながら詰んでしまったということは、安倍政権は生きる屍、ゾンビのようなものだ。

本気で日本経済を立て直そうとするなら、低欲望社会の問題解決に取り組むしかないのだが、その場合、3つぐらいの非常に際立った政策が必要になる。1つは移民政策であり、2つ目は少子化対策。安心して子供を産み、育てられるような社会をつくること。そして3つ目は教育改革。もう一度、世界で戦えるような気概とアンビション(大志)を持った人間を育てることだ。

この3つの政策が回らない限り、日本の再活性化はありえない。しかし、今のところ安倍首相のアジェンダには入っていない。本来ならポスト安倍を狙う人たちがそうしたアジェンダを明確に打ち出して対抗すべきなのだが、どこからも聞こえてこない。3年の新たな延命を達成した安倍総理ではあるが、これ以上アジェンダを増やさないで少なくとも1つ、何か成果につなげてもらいたいものだ。

(小川 剛=構成 時事通信フォト=写真)
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