セブン思考なら――「数字の裏に客の笑顔が見える」

一方、「仕事を楽しく思わない人は、うちにはほとんどいない」と言うのは、セブン-イレブンの鎌田氏だ。

「仕事が面白くないとこぼす部下がいたら、それは視野が狭くなっているからでしょう。仕事の醍醐味やダイナミックさに気づいていないのです。部下がモチベーションを失っていれば、上司は違う角度から説明してあげる必要があると思います」

具体的には、自分の仕事が全体の中でどのような位置づけにあるのかを知ることが大切だ。鎌田氏が仕事の面白さに気づいたのは、商品部にきて文房具担当になったときだった。家の近くのセブン―イレブンに行くと、自分が選んで推奨したノートが店頭に並んでいた。当時、セブン-イレブンは約3000店。自分が勧めたノートが全国の店に並んでいるところを想像して、「これは大変な仕事だ」と身震いした。現場に行くことで自分の仕事がただの文房具選びではないことが理解できた。

モチベーションを高めるために、現場に足を運んで自分の仕事の醍醐味を味わうのは、たしかに効果的な手段だ。ただ、いつも現場に行けるとは限らない。そんなとき頼りにしたいのが“データ”だ。

「データを見て、たとえばある商品が昨日は3万個、今日は4万個売れたとします。これは単に売り上げが伸びたというだけでなく、より多くのお客様を笑顔にしたということ。データの後ろ側にお客様の笑顔が見えるようになれば、必ずしも現場に行かなくても仕事の醍醐味を感じられるのではないでしょうか」

データの向こうにお客様の笑顔が見える。そのレベルまでデータを読みこなすには、何が必要だろうか。

「鈴木敏文会長が重視しているのは、仮説と検証です。お客様の変化から仮説を立てて商品を開発。開発したものが本当にお客様のニーズと合っていたかどうかは、データを見て検証して、ズレがあればふたたび仮説を立てて改善します。私たちはこのサイクルをひたすら回してきたので、データからお客様の表情が自然に見えるようになってきました」

現場やデータからお客様の笑顔を想像して、自分の仕事の意義を確認する。それが毎日の仕事を楽しむコツだ。

山口悟郎
京セラ社長。1978年、同志社大工学部卒。京都セラミック(現京セラ)入社。半導体部品国内営業部長、半導体部品事業本部長などを経て2013年から現職。
 
鎌田 靖
セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員商品本部長。中央大学文学部卒。セブンカフェや自社開発商品のセブンプレミアムをヒットさせた。
 
(的野弘路、尾関裕士=撮影)
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