〈対談を終えて〉チーム力を向上させる光の当て方
原監督は人の輝かせ方がうまい。大勢の陸上選手の中で、タイムの速い選手に目がいくのは当然だろうが、その選手にスポットライトを当てすぎることはない。どんな選手であっても、半歩先の目標をクリアしたら、必ず光を当てる。これが原監督流の光の当て方だ。突出した選手だけに光を当てていたら、むしろチーム全体の照度が下がってしまうだろう。
職場でそのような光の当て方をしている管理職はどれだけいるだろうか。数値目標の達成のため、つい「相対的に」高い成果を挙げるメンバーにばかり光を当てすぎていないだろうか。トップ・セールスを達成している社員を「ロールモデル」と称して、「あいつに倣え!」と号令ばかりしていないだろうか。頑張っても頑張っても光を当ててもらえない中位層・下位層の心境を慮っているだろうか。
心理学に「自己効力感(self-efficacy)」という概念がある。これは「自身の経験に裏づけられた自信感」を指す。数々の研究で、人のモチベーションを高める重要な概念であることが明らかになっている。原監督は、選手1人ひとりに「できた」ことの喜びを繰り返し与え、長期的に「できる」という感覚を醸成する効果をもたらしている。職場でも自己効力感を育む光の当て方が重要だ。
(構成=Top Communication 撮影=松本昇大)