韓国人の根底にある日本への「恨」感情

韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、そしてオランダ。慰安婦問題で日本が関与を認めて対処したのがこの五カ国。この中で韓国以外の国とは政治的決着がついている。

韓国人の気持ち、あるいは怒りが収まらない背景には、韓国人の「恨(ハン)」の感情がある。韓国人(朝鮮人)は歴史的に「小中華」の思想を持っている。東アジアには中華(中国)を頂点とする秩序があり、朝鮮はその中華に最も近いところに位置するという誇りがあった。日本はといえば、海を隔てた島国。自分たちより格下という意識だ。

それが明治時代になり、日本が国際社会の中で台頭してきて、日清戦争と日露戦争で勝利。そして1910年、日本は韓国(朝鮮)を併合し、36年に及ぶ日本による統治時代が始まる。

韓国併合後、初期の力による統治、中期の文化尊重の後、皇民化政策がとられるようになった。天皇への忠誠を要求し、創氏改名や日本語教育などが進められた。韓国人を忠実な日本帝国の臣民にするための政策は、日本が大東亜戦争という総力戦に入っていくのと並行して約15年続いた。小中華を誇りにしてきた民族にとってはアイデンティティーの喪失になった。

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第二次世界大戦前、韓国は日本領だった

韓国人にとってさらに耐え難いのは、皇民化政策成功の結果、韓国の優秀な青年たちが、日本人と同じようにアメリカを相手に戦ったことだ。祖国韓国のため、同時に日本帝国のためを思って戦った。戦後の韓国人はこれによって、韓国人としてのアイデンティティーの喪失に加え、日本人としてのアイデンティティーを積極的に持った不条理に深い悔恨の思いも抱いた。韓国人の恨の感情は複雑かつ根深く、慰安婦問題はこうした歴史の流れの中にある。

安倍首相の周辺や一部の識者は「狭義の強制性」に固執する。狭義の強制連行がなければ、日本国に責任はない、という印象を国際社会に与えてきた。たしかに、国家の直接行為と女衒が女性をだましたことは同じではない。だが、国際社会はいま、「あなたの娘が慰安婦にされたら、どう思うか」と考える。社会の末端の若い女性たちが、戦場の末端で事実上拒否できずに性を強要されたのだ。慰安婦だった韓国人はいま、50人ほど生存している。彼女たちが存命中に韓国との慰安婦問題が和解することを切に願っている。