「手軽さ」のほうも、盤石とはいかないようだ。家族葬の場合、参列者は少ないが葬儀後の弔問客が多くて遺族が忙殺されることがある。家族葬をタブー視する人がいることにも注意すべき。地方の親戚から「家族葬なんて恥ずかしい」と反対され、一般葬に切り替える例もあるという。合理性だけでは決められないのが葬式なのだ。

一方、宗教学者の島田裕巳氏が提唱する「0(ゼロ)葬」は徹底している。葬儀をせず、遺骨を引き取らず、墓をつくらない。「死んだら跡形なく消えてしまいたい」と望む人は多いから、要望があることは想像できる。実際にはどうか。

「直葬を選んだ場合も、『ちゃんとお葬式をしてあげればよかった』と後悔する人が多く、葬儀を省くことは遺族にとっても大きなストレスになります。私自身はゼロ葬を実践した人を知りませんが、そう多くはないだろうと思います」(市川さん)

そもそも「遺骨を持ち帰らない」ことは可能なのか。「名古屋の八事斎場では対応しているといわれていますが、一般の火葬場では無理かもしれません」と市川さんは疑問を投げる。需要はあるが、現実にはなかなか対応してもらえないのが実態かもしれない。

【ANSWER】都会では9割の人が家族葬を検討している

葬儀相談員 市川 愛
1973年、神奈川県出身。葬儀社紹介会社を経て2004年に独立。消費者視点からの相談・講演を行う。著書に『お葬式の雑学』など。
 
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