ほとんど価値を付加しない排出集約型の活動は、廃止するか、さもなければより効率的な企業にアウトソーシングすればよい。価値創出にとって重要な活動は、パフォーマンスの向上によってエクスポージャーをライバル企業より低く抑えることができれば、戦略的な活動になるかもしれない。

ウォルマートの場合、内から外への影響を分析することによって、気候変動に対するアプローチを支える理論を明確にした。ウォルマートの活動は物流集約型であり、同社はそれによる二酸化炭素の排出を削減するために積極的な取り組みを行っている。この取り組みは、一見、純粋に業務効率的観点からのアプローチに見える。同社はバリューチェーンでの二酸化炭素の排出がコストに及ぼすマイナス影響を緩和するために、エネルギーの使用量を減らしているのである。

しかし、同社がその圧倒的な規模、広い活動範囲、技術に多額の投資を行う能力を活かし、なおかつバリューチェーンの活動を構成し直すことによって、小規模なライバルにはとうてい真似のできないかたちで排出量を削減できれば、ウォルマートの排出削減プログラムは、戦略的な性格を帯びるだろう。

ウォルマートは、自社の二酸化炭素エクスポージャーを競合他社より大幅に削減するだけでなく、それを低く抑え続けることができるよう、思い切った戦略的行動をとっているように見受けられる。

規制によって変わる気候変動のリスク

内から外への影響の分析とともに、外から内への影響(気候の変化と規制環境の変化が自社を取り巻くビジネス環境に及ぼす影響)の調査によっても、新しいチャンスと脅威は特定できる。

気候変動は企業のビジネス環境に、大きく分けて2つの形で影響を及ぼす。気温や天候パターンが変わることによる影響と、排出コストを押し上げる規制による影響である。これらは原材料の入手先や入手しやすさ、需要の規模・成長率・性質、関連産業やサポート産業へのアクセス、および業界の競争に関連する規制やインセンティブに影響を及ぼす可能性がある。ビジネスリーダーは、競争の背景をなすこうした要素のそれぞれに対して、気候変動がどのような影響を及ぼすかを評価しなくてはならない。