出版や広告を扱うウララコミュニケーションズ(本社・福井市)で営業局長をしている田中藤則さん(42歳)は、「平日の帰りはほぼ毎日23時過ぎ。朝は8時半出社」という仕事漬けの日々を過ごしている。それでいて健康で柔和な印象を受ける。

理由は、上村さんと同じく3世代同居の安定感だろう。田中さんの実家は、福井市から車で30分ほどの大野市の田園地帯にある農家。岐阜県の大学を卒業後に戻ってきて就職した田中さんは、31歳のときに結婚した。現在は小学生の子ども2人と両親を含む6人暮らしだ。

実家の畑で遊ぶ田中さんの子どもたち。大野市は里芋の名産地として有名。

「ヨメは元同僚だから、仕事で遅くなっても理解してくれます。ただし、どんだけ夜が遅くても、朝飯だけは家族6人全員で食べる。平日の夕食は僕抜きの5人で食べています」

田中さん自身も「じじばばっ子」で、共働きだった両親の代わりに祖父母にしつけられて育った。

「遊び場は田んぼです。傷のついた里芋をボール代わりにしてゴルフの練習もできる。1枚100メートルぐらいの田んぼが続いていますから、飛距離も測れます(笑)。夏はトイレから蛍が見えますよ」

素晴らしい環境だが、嫁に入った妻のほうは閉塞感を覚えるのではないか。

「親子4人で住もうかと考えたこともあります。でも、かえってヨメに負担がかかるのでやめました。ヨメは酒蔵の事務仕事をパートでやっています。仕事が息抜きになっているようです」

肉親が家事を手伝ってくれるからこそ、夫も妻も安心して働きに出られる。気分転換と収入の両方を得られるのだ。