“人類最大の激痛”と表現されるのが「群発頭痛」。これまで慢性頭痛といわれていた機能性頭痛が、今日では「一次性頭痛」と呼ばれるようになり、群発頭痛は片頭痛や緊張型頭痛とともにその頭痛の仲間である。
その中の重症片頭痛と群発頭痛の治療薬として使われている「スマトリプタン」の在宅自己注射療法、いわゆる「自己注射」が2008年から保険適用となっている。
たかが頭痛ではない――。群発頭痛の患者の中には、痛さに耐えきれず、自殺した人もいる。また、重症片頭痛では寝ているときに片頭痛の発作が起こることがあり、そのときは嘔吐することもある。胃腸の運動がストップするのでスマトリプタンの錠剤はもちろん、点鼻薬でも効果はあまりない。だから、それらの患者からは自己注射が待たれていた。
自己注射を必要とする片頭痛は頭の片側、あるいは両側のこめかみから目のあたりが心臓の拍動に合わせるように、ズキンズキンと激しく痛む。1カ月に1~2回の頻度で出現するが、多い人では週に1~2回のケースも。痛みは数時間から2~3日は持続する。
一方、群発頭痛はある一定の時期に頭痛発作が群発地震のようにしきりに起こり、目の奥をえぐられたような激痛が走る。頻度は年に1~2回。ただし、発作が始まると1~2カ月は連日のように激痛に襲われ、30分から2時間ほど続く。通常、夜間に起こることが多い。
1分、1秒でも早く頭痛を抑えたい、と患者は願う。ところが、スマトリプタンの点鼻薬でも効果が出るまでに20分程度はかかっていた。それが自己注射では10分程度で効果が出る。
国内でのスマトリプタン自己注射を使った臨床試験では、次の結果が報告されている。片頭痛患者33人、群発頭痛患者33人に対して中程度以上の頭痛発作時に自己注射をすると、片頭痛患者では投与10分後に30.3%、60分後には93.9%の人で症状が改善した。群発頭痛患者では、投与10分後に63.6%、30分後には93.9%の人で症状が改善した。
もちろん、重症片頭痛、群発頭痛患者であれば、どの患者にも自己注射が処方されるわけではない。「現在の経口薬や点鼻薬でコントロールできる人」や「自己注射に不安や抵抗のある人」には自己注射の必要はない。
生活指導、患者指導、そして発作が起きたときに点鼻薬でうまくいかないと、自己注射を考慮することになる。
そして、何より重要なのは片頭痛なり群発頭痛なりを、確実に自己判断ができることである。つまり、患者自身が二次性頭痛との区別ができるかどうか、である。
二次性頭痛に入る疾患は「くも膜下出血」「脳内出血」「脳梗塞」「脳腫瘍」「慢性硬膜下血腫」「髄膜炎」「副鼻腔炎」など数多い。
もちろん、病名までというのではなく、“いつもの頭痛と違う”――この判断が求められるのである。
【生活習慣のワンポイント】
前回は片頭痛の予防を紹介したので、今回は群発頭痛。群発頭痛は発作が始まると1~2カ月間、毎日のように痛みが起こる。この期間を群発期という。その群発期の頭痛予防である。
(1)アルコールは避け、タバコは控える!アルコールは血管を拡張させ頭痛を招くし、タバコの煙は鼻の奥の神経節を刺激して頭痛の原因となる。
(2)シャワーですまそう!お風呂に入ると血行が良くなり頭痛を起こしやすい。
(3)体内時計を乱さない、規則正しい生活!
(4)飛行機に注意し、高い山には登らない!
飛行機も高い山も気圧の変化があり、それが血管を拡張させて頭痛の引き金に。それでも飛行機に乗らねばならないときは、医師に相談すべきである。