致命的な「情報の空白」を避けるために

[6]会社が日頃から心掛けている安全対策をあらかじめ記録しておく

日頃から十分な予防措置を講じていても、平時にこうした努力を記録しておかなければ、企業の努力はだれにもわからない。「消費者安全、職場安全、保安などの企業努力は、緊急事態が発生したとき使えるように記録し、アクセス可能にしておくことだ」(パウエル)。

レジェスターはさらに用心深い。彼は企業全体や特定の工場やオフィスの状況について、豊富な資料を配布できるように準備することを勧めている。そうすれば、危機発生後の24時間によく見られる「情報の空白」を避けられる。

以上の方策は万能薬ではない。危機の本質は予知不可能というまさにその点にあるからだ。ボーイング社のトーガスはいう。「細部まで煮詰めた画一的な危機情報管理計画はさして役立たない。危機の規模に応じて迅速に容易に対処できる能力(スケーラビリティー)がものをいう。ビル火災にも地域一帯を巻き込む地震にも通用するように作るべきだ」。なににもまして重要なのは、企業が危機に迅速に適切に対処するうえで道標となるような危機情報伝達計画を作ることだ。「率直に問題を認め、適切に対処し、解決できることを示せば、世間は問題を大目に見てくれるし、やがて忘れてくれる」。

※参考文献
『Risk Issues and Crisis Management: A Casebook of Best Practice』 Michael Regester and Judy Larkin(2002年/Kogan Page)

(翻訳=ディプロマット)