創価学会婦人部は安保関連法案に大反対
【塩田】議員時代以来、公明党・創価学会グループの内情に精通していますね。公明党は自民党との連立政権の下で、衆議院での法案の与党単独可決に同調しましたが、公明党・創価学会グループの内部の動きをどう受け止めていますか。
【平野】創価学会の熱心の信者、特に婦人部を中心に、この法案にきわめて強い反対があるそうです。一方、創価学会では来年、会長人事があります。私に届いている情報では、これまで首相官邸に協力してきた会長候補の一人が、法案の反対論に非常に理解を示し始めているらしい。他方、自民党との協議の中心だった北側一雄副代表ら弁護士の国会議員は、創価学会の顧問弁護士の影響を徹底的に受けているみたいです。弁護士の山口那津男代表も、集団的自衛権の解釈改憲の反対論者でしたが、説得を受け、自民党との集団的自殺の道を選んだようです。
【塩田】国会での攻防の舞台は参議院に移りましたが、会期末は9月27日です。参議院が議決をしなかったり衆議院と異なる議決をしたときは、衆議院の議決から60日が経過した後、衆議院で3分の2の多数で再可決すれば、法案は成立するというのが、憲法第61条の「60日ルール」です。これを使う可能性が高いのでは。
【平野】7月16日の60日後は9月14日です。19日から大型連休に入りますので、60日ルールでやろうと思えば、18日までが勝負でしょう。
【塩田】自民党は参議院で過半数に7議席、足りません。衆議院での3分の2は316ですが、こちらも26議席、不足で、法案成立には公明党か維新の党の同調が不可欠です。
【平野】その前に、今の野党が気がついていない決定的な問題があります。私は法案を廃案にする「死角」と唱えています。現在、小沢一郎さん(元民主党代表・現生活の党と山本太郎と仲間たち共同代表)のグループは散々な目に遭って、発言の場がない。それで、そのペーパーをある党の幹部に読んでもらったところ、その人から、党を挙げてこれで戦うという返事がありました。ポイントは二つあります。
国連が集団的自衛権を行使した実績、実態の報告の事例が14もありますが、一つは、国連の集団安全保障の決議とセットになっているのは、湾岸戦争とアフガニスタン問題の二つです。いい悪いは別にして、この2例は国連憲章に基づく制度的なものです。
もう一つ、あとの12例は米ソ冷戦の代理戦争や植民地の利権争いや中東の石油をめぐる紛争といった、ろくでもない、人類がやってはいけない行為によるもので、これからはそれに参加するわけでしょう。この実態を挙げて質問し、こんなことに自衛隊を使うのを憲法は許すのかと攻めればいい。
そもそも吉田茂元首相以来の保守本流の考え方は、集団的自衛権を真の権利と思っていない。第2次世界大戦後に起こった戦争の大半は集団的自衛権による戦争で、ものすごく胡散臭いんです。本来ならその12例は国連憲章を冒涜する行為で、いいものではない。
1954年に自衛隊法と防衛庁設置法が参議院で可決・成立したとき、衆議院の外務委員会で、外務省の下田武三条約局長が「集団的自衛権は共同防衛省条約や相互安全保障条約が必要。それを憲法が許すはずがない」と言っています。これは今も変わっていません。