リーマン・ショックは誰でも予測できた
不況こそが挑戦のチャンスだ。他社が業績悪化により身動きが取れないときにこちらが動けば、放出された優秀な人材を獲得できる。ライバルが新規出店もままならないうちに、安くなった土地に新店舗を建てることもできる。
無論、不況でも果敢に挑戦するためには、準備が必要になる。サブプライムローン、リーマン・ショックと続く大不況でも、ニトリが成長できたのは、先読みして準備をしていたからだ。なぜ大不況を予測できたのか、その理由はシンプルだ。
日本を豊かにするという大志を抱くきっかけとなった米国視察だが、その後も私は足繁く米国へ通った。視察では家具のトレンドや価格の推移だけでなく、住宅価格についても定点観測を続けていた。そこで気づいたのが、ごく短期間の間で米国の住宅価格が2、3倍に膨れ上がっていること。もしそのことを知れば、ほかの経営者も危機に備えることができたはずだ。それは明らかにバブルの兆候であり、バブルのあとに反動がくることは歴史的な事実だからである。
ライバルたちと私の差は、現場を見ていたかどうかということだけだ。サブプライムローンが爆発するのは07年のことだが、私は05年から、コストを大幅に縮小させることで、50億円の資金を準備し、好機をうかがっていたのだ。
3年前に円安を予測、着々と商品開発
もうひとつ、最近の話をしたい。この4月、ニトリは銀座の百貨店に出店した。置いている商品は従来の低価格路線と比べて、多少割高だ。一部では「ニトリが安売りをやめた!」と騒がれたが、そうではない。これまで低価格帯に偏っていたラインナップを見直しただけだ。
最近になって、いよいよデフレからの脱却が見えてきたと騒がれている。そんなニュースを見て、急いで商品の値札を付け替えたわけではない。われわれは3年前から、円安とデフレ脱却を見越し、その結果、中価格帯の商品が売れるようになるはずだ、と商品開発を進めてきたのだ。急ごしらえの製品では、顧客に満足は提供できない。あくまで「お、ねだん以上。」を実感してもらうための努力をこっそり積み重ねてきたからこそ、このタイミングで商品を世に出すことができたのだ。