対企業でも同じようなケースはある。苦情を言っている本人はあまり大きな問題と思っていないものの、その上司が怒っているという場合だ。

いわば代弁者が謝罪の相手になるパターンで、一般客でもクレームを言いにきたのは夫だが、実は怒っているのは妻というケースである。

会話のなかで「この人は誰かの代弁者かもしれない」と感じたときは、間川弁護士のように直接聞いてみるほか、「御社内でご迷惑をおかけしているようなので謝罪に伺いたいのですが、一緒に行っていただけますか」「奥様もお怒りですよね」などと言って反応を見る方法もある。

大手人材派遣会社の営業本部長を務め、現在はクレーム対応研修を実施している秋元次郎氏は、企業組織が相手ではクレームの連絡が伝言ゲームのようになり、何が問題なのかが掴みにくくなることがある。その場合は踏み込む勇気も必要だと言う。

「人材派遣では、顧客企業の決定権者と、現場で派遣社員に指示をするスーパーバイザー的な役割をする社員がいるケースがよくあります。スーパーバイザーが自分の好き嫌い混じりに『あの派遣社員は覚えが悪い』と決定権者に伝えたために発生したクレームは厄介です。窓口である決定権者と話をしても、本当のところがわからないからです」(秋元氏)

このようなケースで、経験の浅い営業マンは謝罪にばかり意識が向いてしまい、再発防止策にまで頭が回らない。ベテラン営業マンは、「こうした事態を繰り返したくないので、スーパーバイザーの方にお話をうかがわせていただけないでしょうか」と一歩踏み込んだ対応をする。そうやって根本的な問題を解決できるかどうかで、その後もビジネスが継続するかどうかが決まってくる。

【答え&解説】いったん解決したと思ったのに手のひら返しをするのは、ほかに怒っている人がいてそれを代弁していることの表れ。早く解決したい気持ちが見え見えのB、Cは避けたい。手間がかかることを覚悟でAを提案すれば「そこまでしなくても」と相手も現実的になる。

弁護士 間川 清
1978年生まれ。25歳で司法試験に合格し、ポート川越中央法律事務所設立。損害賠償事件、刑事被告人弁護など年間200件以上の弁護士業務を担当。被害者への謝罪・示談交渉、悪質クレーマーへの対応等を通して謝罪術を確立。著書は『うまい謝罪』など。
コンサルティングミッション代表 秋元次郎
損害保険会社を経て、人材派遣会社マンパワージャパンにて約20年勤務。銀座支店長、営業本部長、オペレーションサポート本部長等を歴任。2003年独立し、現職。主に派遣元事業主へのコンサルティングや派遣先向けセミナーを全国で多数実施する。