実は3年ほど前から「ソーシャルメディアが流行ってきたので、リスク回避をしたいが、どう対応したらいいか」という人事担当者からの問い合わせが増えてきました。
予防策としては講師を呼び従業員向けのセミナーを開くのが基本です。とはいえ、セミナーを開いても指導は「職場での不平不満や愚痴を書かない。職務上知りえた数字や話を書かない。取引先の情報や悪口を書かない。他人のプライバシーを公開しない」といった基本的な心得の徹底しかありません。社員を集める手間と時間、そして講師料。コストを考えるとセミナー開催に二の足を踏む企業がほとんどでした。
そうした声を受け、手軽にSNSのマナーを学べる研修商品を2013年春に開発しました。目立った宣伝を行っていないにもかかわらず、問い合わせが急増しており、ニーズの高さを実感しています。
こういう世の中になれば100人に1人くらいはやらかす人がいるでしょう。でも、デジタルの世界ではたった1人がやったことが一瞬で全世界に広まってしまいます。ほかの従業員が全部きちんとしていてもだめです。だからその1%を0.1%、0.01%と限りなくゼロに近づけていく努力が必要です。しかも「自分はソーシャルメディアのリテラシーがある」「自分はツイッターを使っていないから大丈夫」ともいえないのです。こんな事件もありました。
内定者と雑談をしていた先輩が、後輩に夢を与えたかったのか、発表前のビッグプロジェクトの話を打ち明けたところ、内定者が「私も会社に入ってこんなカッコいい仕事をしたい」とプロジェクトをツイッターでつぶやいてしまったのです。
また、こんな騒ぎも。父親が、娘の好きな人気アイドルが会社のCMに起用が決まったと娘に話したところ「今度、パパの会社のCMに出るんだって」と娘がツイートして、それが拡散。発表前だったのでファンからの問い合わせが会社に殺到したということもありました。
SNSリテラシーだけでなく情報セキュリティそのものに注意が必要なのです。これからはそういったことも含めた従業員教育をしていたかどうかが、企業に問われるのではないでしょうか。
採用担当者向け「採用力強化シリーズ公開研修」などを企画運営。2013年4月に発売を開始した内定者向けのソーシャルメディアマナー研修教材「SNS Kit」の開発責任者。