POINT3:変動係数とは
事業規模が異なっても比較できる

▼標準偏差をもっと活用しよう

ビジネスでは、大型店舗と小型店舗のように、前提が異なる2つのデータを同じ土俵で比較したい場合が少なからずあります。しかし、POINT2で述べたように標準偏差では前提の異なるデータ間の単純比較が困難です。平均値が大きく異なれば、その計算方法から当然、標準偏差も異なるからです。

このような場合に使用する手法が「変動係数」です。変動係数とは標準偏差を平均で割ったもの。この値を使ってデータの大きさの違いを揃えることで、標準偏差のままでは比較できなかったものを比較できるようにするわけです。

例題を考えてみましょう。得意先は出店エリアとして地域Aを検討しています。その配達遅延リスクを相対的に知るために、配達日数のバラつき方を他の地域B、地域Cと比較してみましょう。バラつき方を比較するには、標準偏差を比べてみることです。ポイント1で述べたように、標準偏差の値が大きいことは配達日が安定しておらず、遅延のリスクが高いことを意味します。

図を拡大
地域A、地域B、地域C

地域A、地域B、地域Cという3つのエリア(図参照)について、配達日数の平均と標準偏差を調べてみると、地域Aは平均3.3日、標準偏差1.6日、地域Bは平均3.3日、標準偏差1.0日、地域Cは平均5.9日、標準偏差1.6日と算出されました。この結果をどう判断するべきか。

地域Aと地域Bは平均配達日数が同じで、標準偏差は地域Aのほうが大きくなっています。平均が同じ場合は標準偏差の大小でバラつきの大きさを比較できるので、バラつき方は地域A>地域Bです。一方、地域Aと地域Cでは標準偏差は同じですが、平均が地域Cのほうが大きくなっています。このままでは標準偏差の単純比較はできません。

図を拡大
平均値が異なる場合、「変動係数」を求めよう

そこで各地域の変動係数を調べると、地域Aが0.5、地域Bが0.3、地域Cが0.3と算出されます。標準偏差のままでは比較のできない地域Aと地域Cを比較すると、地域Aのほうが大きくなっています。これは標準偏差が同じでも、変動係数の大きい地域Aのほうが地域Cよりバラつきが相対的に大きいことを示しています。つまり、バラつきは地域A>地域Cです(図参照)。

以上のように配達日数のバラつきは地域A>地域Bであり、地域A>地域Cであることがわかりました。すなわち、3つの地域を比較すると地域Aがもっともバラつき度合が大きく、配達遅延のリスクが大きいと考えられます。

これは出店エリアとして地域Aを検討している得意先の小売りチェーンにとってはマイナス材料であり、そこを得意先にする営業部門の担当者にとって厳しい結果といえます。