課題を解くためのPOINT1:標準偏差とは
「事業のリスク」を数値化する

▼データの「バラつき」を把握する

精緻な計画の上に成り立った事業計画でも、実際にはその通りになるとは限りません。得意先にプランを提案する際には、計画通りにいかないリスクについて見える形で示すことがポイントになります。ビジネスの判断を下すうえで、見えないリスクを背負った「絵に描いた餅」にならないよう、現実的にどうなのか、という点を考慮することが欠かせないからです。

計画通りにいかない「リスク」の正体とは何でしょうか。

前パートで平均を用いてデータの大きさを集約すると、問題の大きさをざっくりつかみやすくなる半面、集約する前の個々のデータが持つ大きさの違いが隠れてしまうと述べました。この個々に大きさの異なるデータがどのように分布しているかを示すものが「バラつき」の情報です。仮に平均値が同じであっても、元のデータのバラつき方にはさまざまなバリエーションが考えられます。

「バラつきが大きい」とは、小さな値から大きな値まで、広い範囲でデータが存在していることを指し、「バラつきが小さい」はその逆を指します。

データが2つ以上あれば、そこにはデータのバラつきが存在します。バラつきとは「振れ幅」や「リスク」と読み替えることもできます。平均配達遅延日数が同じでも、バラつき方の大きな地域と小さな地域では、大きな地域のほうが遅延の振れ幅が大きくなり、その分リスクも大きくなるわけです。

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データの大きさと数をグラフ化すると……

したがって平均で算出する「大きさ」と「バラつき」はセットで考える癖をつけなければいけません。しかし実際には平均で大きさを出した段階で安心し、思考停止してしまう人が多いので注意が必要です。

では、バラつき方はどうやって示すことができるでしょうか。複数のデータが存在するときに、データ全体のバラつきを示す統計手法の一つに「標準偏差」があります。データが平均からどれくらい離れて分布しているかを数値で示してくれ、データ全体の状況を把握することができます。視覚的なイメージで示すと図(上図参照)のようになります。標準偏差はExcelを使えばすぐに求めることができます(下図参照)。

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Excelで「標準偏差」を求める

例題の場合で考えてみましょう。地域Aの10月の配達状況から、平均配達日数は3.3日、標準偏差は1.6日でした。ここでいう標準偏差とは、10月の配達日数の約3分の2のデータが、平均3.3日からプラスマイナス1.6日、すなわち1.7日から4.9日の範囲に存在することを意味します(ただし、データが正規分布に従うことが前提。正規分布については次ページで)。標準偏差の活用法については、次ページでご紹介します。