POINT2:標準偏差の活用
時系列で「安定度」がわかる

▼「正規分布」かどうかを見極めるには

ビジネスにおいては、標準偏差をどのような場面で活用できるでしょうか。

応用しやすい一例が、時系列で「安定度」の推移を判断する方法です。先の例で考えてみましょう。

地域Aの10月の配達状況を見ると、平均配達日数は3.3日、標準偏差は1.6日でした。翌月の平均配達日数が3.0日、標準偏差が1.3日と推移していたとしましょう。この場合、平均配達日数が縮まり、標準偏差の値も小さくなっているので、「日によるバラつきが減って安定的に配達が行われるようになり、先月より状況が改善している」と判断できます。

もう一つ、例を挙げましょう。

ある小売店の1日平均来客数が34.5人、標準偏差が14.6人だったとします。これが翌月には平均来客数が38人、標準偏差が12人に、さらに翌々月には平均45人、標準偏差10人と推移したとしましょう。この場合、「毎月の来客数が増えるとともに、お客さんの多い日と少ない日のバラつきが減り、コンスタントに集客できるようになっている」と判断できます。

時系列で標準偏差を比較する際、注意しなければならないのは同じ前提条件の中で比較することです。先の例でいうと、より規模の大きいお店と比較しても、「大型店舗のほうが標準偏差は大きいので、バラつきは大きい」とは判断できません。

標準偏差の最大の特徴は、平均には表れないデータのバラつきをざっくりと把握できることにあります。

POINT1の図(前ページ)のように平均に近い値のデータが多く、そこから離れるにしたがってデータの数が徐々に減っていくような分布を「正規分布」と呼びます。データのバラつきが正規分布に近い場合、平均から左右に標準偏差一つ分離れた値までに、全体の約3分の2のデータ数が収まります。そうでない場合、標準偏差の値そのものを単独で、何らかの価値を生む情報として使うのは困難です。というのは、標準偏差だけではデータの分布の偏りを知ることもできず、約3分の2のデータが収まる原則も当てはまらないからです。

図を拡大
正規分布とそうでない場合をグラフ化すると……

グラフ(図参照)を見ると、両方ともほぼ同じ横軸の幅にすべてのデータが収まっています。しかし図Aは正規分布に近く、平均±標準偏差の範囲内にあるデータ数も理論値に近い67%を占める一方、図Bは正規分布と見なすには無理があり、平均±標準偏差の範囲には51%しかデータが含まれません。

「正規分布」かそうでないかを簡易に判断するには、データをグラフ化してみてください。データが平均を中心におよそ左右対称で、「釣り鐘型」に分布していれば、正規分布に近いといえます。