本当のことを言わなければ国民はわからない
【塩田】2度目の安倍晋三首相の政権運営、リーダーシップをどう見ていますか。
【片山】かつて一緒にやりましたので、私は安倍さんは嫌いではありません。私が参議院自民党の国対委員長のときに安倍さんは国対副委員長で参議院の担当でした。担当の安倍さんと林幹雄さん(現衆議院議運委員長)が毎朝、参議院の国対の会合に報告にくる。私は「説明が悪い。語尾不明、はっきり言え」と、しょっちゅう2人を叱っていたんです。安倍さんは「はい」って、返事して……。まさかその人が総理大臣になるとは思いませんでしたから(笑)。安倍さんの評価は色々ありますが、友だちやファンは多いですね。人柄のよさ、それに一種の見えない徳があるのでしょう。
2度目の政権で、よくやっていると思いますよ。ですが、私は予算委員会で「急がば回れだ。もっと丁寧に時間をかけてやる方がよい」と言っています。ばたつきますね。やはり日本の安全保障や憲法改正には強い思い入れがあるからでしょう。
【塩田】片山さんは集団的自衛権問題や憲法改正について、どうお考えですか。
【片山】憲法改正はやるべきだと言っています。維新はそうですよ。集団的自衛権も限定的に容認しています。ただ、憲法を変えずに解釈の変更でやるのでは、自ずから限度があります。私どもはもう少し抑制的、限定的に考えるべきだと思っています。
安倍さんの答弁を聞いていると、集団的自衛権を何に使うのか、よくわからない。「ホルムズ海峡での機雷掃海だけ」みたいな答弁をしていましたが、もっと本当のことを言わなければと思います。「自衛隊のリスクは増えません」と言っていますが、誰が考えても、リスクは増えるに決まっています。「リスクは増えるけど、できるだけ増やさないようにします。ここまでは自衛隊のみなさんを危険にさらすけど、こういう措置を取ります。それをわかってください。それをやらなければ、日本の安全は守れないし、アメリカも本気で守ってくれない」と本当のことを言うべきだと思いますよ。本当のことを言わなければ、国民はわかりません。だから、6割も7割も反対に近い人がいるんです。
集団的自衛権を認める根拠は自衛権を認めた1959年の砂川事件最高裁判決というのも、わかりにくい話ですね。「憲法改正でやるけど、それには時間も手間もかかるから、とりあえずは解釈でやらせてもらう。ここまではやります、ここまでやりません、状況が変わったときはこうします」と本当のことをはっきりと言ったらよいのではないでしょうか。
アメリカで約束してきたからと言っても、安保法制法案が今国会で通る保証はありません。無理して強行採決なんかしたら、選挙で負けます。強行採決はできないのでは、と考えますが、そうすると、この国会では通りませんね。
【塩田】維新は今国会でこの問題にどう対応しますか。
【片山】松野頼久代表は「過去にPKO法案でも三つの国会をまたいだ。だから、急いでこの国会で法案を上げなくてもいい」と言っていますよ。私は今のままでは法案は簡単に通らないと思うし、強行で通したら不協和音が起こって、大騒動になると思いますよ。だから、急がば回れなんですよ。近道を行こうと思うと、かえって遠回りになります。