我が子の模試データを洗い出す、おやぢ

1. エクセルで子どもの成績を管理する父親

仕事でエクセルを最も多く使うケースとしては売上高などの実績計算であろう。

対前年比、対前年同月比、前期比……。

今の数値が過去と比べてどうだったのかを計算し、売り上げ伸び率を見て、売り上げ予測を立てるときに使用するもので、多くの仕事人は「売り上げが低い」という事実をそのままにはせず、その原因を分析し、対策することによって、さらなる売上アップを狙うためにエクセルを使っている。

このビジネス手法を我が子に使う父親が多い。

子どもが計算問題を解いている隣で、エクセル父さんは模試の結果を解析する

今回の模試の偏差値、前回の模試の偏差値、前々回の模試の偏差値、科目別・分野別チェック、あらゆる資料から取り込んだデータ入力、これをカラーで印刷して、実にわかりやすいと悦に入るおやぢがそうだ。

結果には必ず原因があって、悪い結果を取り除くための対応策はこうである! と分析しまくるおやぢは危険だ。数字での結果を求め過ぎると子育ては失敗する。子育てとビジネスは違うのだ。

さらに、子どもは馬鹿ではない。子ども自身がその原因を十分わかっている。なぜならば、すでに塾や学校が「分析」→「教育的指導」済みだからである。

成績が伸びないのは「やる気が持てない」からであり、「やる気が持てない」のは「わかった!」という感動体験が得られないからだ。

これを上からヤイノヤイノと数字上だけの対応策を叫ばれても、生身の人間、しかも思春期には反発しか呼び込まないのは自然である。見るべきは「数値」ではなく生身の「我が子」であろう。

子ども自身が自らの意志で成績表を管理するのなら問題ないが、いつまでも父親が分析しているならば、子どもが全力で社会生活に「NO!」を突きつける日は意外と早い。

2. 車のカタログを見るかのごとく、学校案内を見る父親

車を買うときにカタログを揃えて、その機能や燃費を細かくチェックし、どの車種がもっとも希望に沿うものなのかを比較検討する男性は多いだろう。そして、ディーラーと交渉だ。

それを近年、子育てでやってしまう父親が増えている。

学校案内の大学合格実績をHPでくまなくチェックし、どの学校がどれだけ(進学面で)伸びているかを分析している父親は多いが、ここで問題なのはそのデータを持って、塾面談に押しかけるようなタイプのおやぢである。

塾の先生方に聞くと同じような話をされることがある。まとめるならこうなる。

「昔の父親は『良い大学に行くためにはどのようなプロセスを経るのか?』というような視点で質問をしてきたものですが、今は違います。単刀直入にこう聞いてきます。『どの学校(小学校、中学または高校)に行けば、最も高い確率で超優秀大学に入れるのか?』と……」

皆さんもよくご承知のように、学校は一流大学に入るための予備校ではない。

その学び舎の空気の中で、どのように呼吸をしながら大人に近づいていくのかという「母なる場所=母校」なのである。

効率だけを追い求め、人生の短期決戦を強いる父親からはデカい器の子は生まれない。