これまで日本人は「水と安全はタダ」と思っているとよく指摘されてきた。しかし、いまではコンビニエンスストアでミネラルウォーターが定番商品として並び、大勢の人が当たり前のように買い求めており、徐々にその意識も変わってきているようだ。
そうした水は人間が生きていくうえで必要不可欠なものであるのだが、実はモノをつくるのにも欠かすことができない。水の問題に詳しいジャーナリストの橋本淳司さんが「Tシャツを1枚つくるのに、どのくらいの水が必要になるかわかりますか?」とクイズを出してきた。Tシャツの原料は綿花。その栽培には水が必要か。30リットルくらい……。いや、50リットルくらいは必要かな。皆目見当もつかず、橋本さんが教えてくれた解答にただ驚かされるばかりだった。
「綿花の多くは、中国、インド、パキスタンなどで栽培されています。そして、Tシャツを1枚つくるのに約250gの綿花が使用され、それだけ栽培するのには2900リットルの水が必要になってくるのです。これは災害時に派遣される給水車1台分に相当します。また、一般的な浴槽には200リットルの水が入りますから、14.5日分のお風呂と考えることもできるのです」
そして、橋本さんがなんとも面白い計算機の存在を教えてくれた。それは環境省がホームページにアップしている「仮想水計算機(http://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html)」である。牛肉、豚肉の畜産製品から、米、パンなどの主食、そして、にんじん、ピーマン、レタスの野菜類といった食料品をつくるのに必要な水の量を簡単に計算してくれる。これを使えば、普段食べている料理にどれくらいの水が使われているのかもすぐにわかる。