「岡山駅程度の駅はまだいくらでもある」
駅の拠点性を高めるという視点に立てば、駅ナカの商業施設の配置も見直す必要がある。たとえば改札の外であればキヨスクよりコンビニのほうが便利だろうし、旅行の手配もネット経由のほうが手軽だという人からすれば、改札のそばに旅行会社の窓口がある必要はない。こうした流れを岩崎さんは「もちろん議論しています」と話す。
「今後も駅ナカの商業施設の全体配置を最適なものへ見直していく。その意味で圧倒的な知名度があるセブン-イレブンとの提携は、中期計画の目玉といえるものだったんです」
セブン-イレブンの地域への展開は、商品を生産する工場や流通網が整ったうえで行われていく。そのため全ての店舗転換には5年を要する予定だが、「岡山駅程度の流動性のある駅は、当社の中にまだいくらでもある」と岩崎さんは言う。
また、流動性は岡山駅などには劣るが、彼が期待する地域の一つが島根県だ。県庁所在地の松江駅のショッピングセンターに、同社はスターバックスコーヒーを誘致した実績がある。13年に島根県1号店となった同店は初日の売上高が500万円を記録。これは現在も日本一の売り上げ記録となっているという。
「このような競争力のあるブランドを駅ナカに誘致するのは、近年の私たちの一つの方針です。スターバックスの成功を見て、高級チョコレートの『ゴディバ』も鳥取駅への出店を決めた。いずれも鳥取県に初進出の店舗となりました。駅の拠点性が増すことで、このような動きが加速するわけです。いま地方では高品質なコンテンツが以前よりも強く期待されている。セブン-イレブンの誘致は街全体の活性化につながるはず。山陰地方という空白地への出店をパートナーシップのもとで早期に進めていきたい」(岩崎さん)
その中でJR西日本が目指しているのは、「これまでの点ではなく、面としての広がりを駅ナカ開発に持たせていくこと」だとデイリーサービスネットの小林さんは話した。
「駅ナカだけではなく、“駅ヨコ”くらいまでの進出を狙っていきたい。我々は地域から離れられない存在。セブン-イレブンとの提携は駅の魅力を高め、鉄道という旅客サービスの価値を面として上げていく、その一つの試みだととらえています」