ベストセラーとなった前作『経営戦略全史』(発行部数7万部)に次いで、今回の『ビジネスモデル全史』も発売後すぐに増刷された(同4万部)。分厚い本だが、ページをめくると写真・イラスト・図版が丁寧に使われているため、とても読みやすい。
本書は、14世紀のメディチ家、17世紀の三井家といった財閥の始祖から、ツイッターやスマホ決済のスクエアを立ち上げた21世紀の起業家ジャック・ドーシーまで、諸氏が生み出してきたビジネスモデルの変遷を説いている。興味深いのはこれら先駆者たちに共通の特徴があることだ。
「そのほとんどが大学を中退したり、人生で失敗を重ねたりしたアウトサイダーです。ヒトと違う生き方を怖がらない姿勢こそが、イノベーションにつながるのでしょう」
日々新しいビジネスが生まれる現代。立ち上げは簡単になっている一方、生き残る確率は低い。成功のためには、何かを核にしながらも、新しいビジネスモデルを効率よくつくり上げなければならない。
「でも、新しい領域で試行錯誤を繰り返すことに、皆慣れていません。コンセプト段階なのに、すぐアンケートを1000件取って決めようとする。そうではなく、まずは『これが欲しい!』という人を数人見つけてくること。その人たちと一緒につくり上げていくことで、初めて良いビジネスができるのです」
では、本書で得た知識は何のために使うべきなのか。それは「差」を見るためだ。「自分が何かアイデアを思いついたら、それは旧来のものとどう違うのか、その差を常に意識してほしい。そしてその差が関係者にとってダイジなことであれば、大きな商売につながるはずです」
(的野弘路=撮影)