迎え撃つベルギービールの対抗策

ビール大手がビール総市場に占める割合が0.5%に過ぎないニッチ市場に敢えて参入する理由には、背に腹を換えられない事情がある。ビールに発泡酒、第3のビールを含めたビール類の国内市場は14年まで10年連続で縮小し、浮上のきっかけすらつかめないでいるからだ。勢いがあるのは付加価値の高いプレミアムビールだけで、高級感と個性のあるドラフトビールを「第2の矢」にし、市場を何とか押し上げようとの狙いがある。

2014年9月、キリンビールはヤッホーブルーイングと資本提携。

これにはベルギー産ビールも黙ってはいない。日本の四国ほどの面積に1500近くの銘柄を数え、日本でも地道に市場浸透に努めてきた結果、ベルギービールのファンも広がってきた。それだけに、セリングパワー、宣伝力で圧倒的なビール大手に、その存在感を奪われてはかなわないと、対抗心もむき出しにする。

ベルギービールの正規輸入元らが組織するベルギービールウィークエンド実行委員会は、ベルギーのブリュッセルで毎年9月の第1週末に開かれる国民的祭典「ベルギービールウィークエンド」を、10年9月に世界で初めて日本に持ち込んだ。6回目の開催となる今年は、「過去の延長線上でなく、ベルギービールが新たな主張のできるチャンス」(小西新太郎実行委員長=小西酒造社長)とバージョンアップして臨む。新たに広島を加え開催地を7都市とし、開催日数も前年の47日から52日間に増やしたことでも明らかだ。

ビールはベルギーの戦略的な輸出産品で、駐日ベルギー王国大使館も特別協力する力の入れようだ。一方で、ベルギーは日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に向けた交渉で、日本に複雑なビール課税制度の見直しを迫る急先鋒でもある。ただ、クラフトビールを巡ってはビール大手の本格参入で消費者の関心も誘い、ベルギー産との相乗効果を生み出せれば、再びブームに火を点け、ビール市場での市民権を得る可能性もある。

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