新しい時代の担い手となるキーパーソンに、田原総一朗氏が切り込む新連載。第1回は、昨年12月に上場を果たしたクラウドワークスを率いる吉田浩一郎社長だ。未来の働き方を変えるクラウドソーシングとは――。

客も仲間も失った1度目の起業

クラウドワークス社長 吉田浩一郎氏

【田原】吉田さんは最初から起業家志望ではなく、学生時代は演劇にのめりこんでいたそうですね。なのに、どうしてビジネスの世界に?

【吉田】じつは劇団で手痛い失敗をしまして。寺山修司にインスパイアされ、廃墟を借りて屋外演劇をしようとしたことがありました。廃墟の管理人という人と契約して半年間かけて準備したのですが、途中で別に管理人がいることが発覚して公演が中止に。注ぎ込んだ200万円は返ってこなくなり、劇団員にも「俺の半年間を返せ」と木材で殴られてケガしました。この事件で、契約やお金のことを何も知らないとやりたいこともできないと痛感。1回、社会に出て勉強しようと、就職しました。

【田原】最初はパイオニアに入って、抜群の営業成績を残したとか。それなのに、どうして辞めたのですか。

【吉田】私がやっていたのは、決まった店舗を毎日、ぐるぐる回るルート営業だったので、新規営業がやりたいと、展示会の会社に転職しました。そこでは主に半導体や液晶、エネルギー関係の企業などを回り、展示してくださいとお願いしていました。

【田原】でも、そこも辞めて、IT業界に転職した。これはどうして?

【吉田】展示会の会社で一営業マンとして事業の立ち上げをやらせてもらったのですが、次は会社の立ち上げをやってみたくなったんです。ただ、身近に会社を立ち上げた人がいなかったので、ひとまず大前研一さんのアタッカーズ・ビジネススクールに通いました。そこでライブドア時代の堀江貴文さんをはじめ、いろいろな方のお話を聞くことができました。なかでも印象的だったのは、孫泰藏さんの授業です。孫さんは、オンラインゲームの世界では、他のプレーヤーとチームを組んで友情が芽生えるという話をしていました。もともと演劇が好きで、人と人は対面で会ってこそ何かが生まれると考えていた私にとって、会わなくても人と人がつながるという話は衝撃的で、まずはインターネット業界に飛び込んでみようと転職しました。