LFP経営はこの米軍の新しい作戦スタイルに範を得ている。すなわち、従来型の企業組織とは別に、現場で自律的に判断できるタスクフォース型チームを多数編成。それらが社内外と戦略的パートナーシップを結び、チーム内およびパートナーとの間に信頼関係を構築し、外部に気づかれぬように計画を進め、一気呵成に成果を挙げるものだ。
実は、こうした組織を持つ企業は日本にもすでに存在する。意外にも、ピラミッド型の日本組織の代表といっていいトヨタが、まさにそうした表と裏の組織のハイブリッドであるLFP経営を実践しているのだ。
トヨタではこうしたタスクフォース型チームを「BR(Business Reform)組織」と呼んでいる(図参照)。
BR組織の原型が生まれたのは1993年。円高による経営難のさなか、「従来の業務は8割の人間で回し、2割の人間は将来のための仕事、もしくは普段手をつけられない仕事に就かせる」という経営方針が定められた。それに基づき、各部門からエース級の人材をピックアップして経営企画部付の少数チームとし、部門を跨いだ困難な課題の解決がミッションとして与えられた。
実はトヨタは80年代の終わり頃、冒頭で述べた組織のフラット化を断行した経験がある。が、うまく機能せず、その後は一度消えた班長制度や係長制度が復活することになった。
そんなトヨタの従来型“表”組織は「部」-「室」-「グループ」という名称の一般的なピラミッド型となっている。が、“裏”のBR組織はそこから独立し、課題の大きさに応じて部または担当役員と直結している。
当初は事務系で始まった取り組みだったが、翌年には技術系でもスタート。以後、現在に至るまで、トヨタはこのBR組織を会社全体の変革ドライバーとして活用している。