狭心症や心筋梗塞を引き起こす動脈硬化。その3大危険因子と言われるのが脂質異常症、高血圧、喫煙だ。
なかでも最大の要因となるのが脂質異常症である。血液中のコレステロール、中性脂肪といった脂質が多い状態のことで、かつては高脂血症と呼ばれていた。4月に日本人間ドック学会が発表した「新基準値」では、LDL(悪玉)コレステロール値などの上限が大幅に緩和されている。だが、生活習慣病総合研究所所長の工藤一彦医師は「現時点ではあくまでもひとつの考え方で、臨床医学的に立証されたものはでない」と忠告する。
一般的に脂質異常症と診断されるのは、LDLコレステロール値140mg /dl以上、あるいはHDL(善玉)コレステロール値40mg /dl未満、中性脂肪150mg /dl以上の場合。脂質異常症と診断されても、直ちに何かの症状が出るわけではない。だが、米国フラミンガム心臓研究によると、最終的に虚血性心疾患になる危険率は健常者の4倍に達する。
工藤医師は言う。
「脂質異常症と診断されたからといって、すぐに心疾患になるわけではありませんが、数年間を比較し、徐々に増えてきているようだと注意が必要です」
脂質異常症に他の要因が重なると、リスクはさらに高まる。
「値が多すぎるという意見も多いのですが、先の調査では脂質異常症+高血圧症の人の虚血性心疾患になる危険率は健常者の16倍、脂質異常症+高血圧症+糖尿病の人は32倍になるという数字もあります。しかし、自覚症状がなければ、悪い数値が出たとしても慌てる必要はありません。適切な食事と運動を心がけましょう」(工藤医師)