1.不断のイノベーションの歴史を語る
1919年創業のヤマト運輸は国内の民間運輸会社としては最古の会社の一つ。創業10年目に開始した東京-横浜間の定期便は、我が国初の路線事業とされる。定時定区間でいろいろなお客様の荷物を混載して運ぶという当時としては斬新なビジネスモデルに着手したのが、同社の第1のイノベーションだ。
そして第2のイノベーションが1976年の宅急便。CtoCつまり個人が個人に荷物を送る手段というのは、郵便小包か鉄道小荷物しかなかった時代に、公営ではなく民間で、しかも「電話1本で集荷、全国へ翌日配達」というサービスは、まさにサプライズだった。しかも始めはオンリーワンだったが、その成功に甘んずることなく、需要が拡大し他社が参入することを想定し、次から次に商品開発をし続け、宅急便市場でナンバーワンであり続けている。この不断のイノベーションのDNAこそ小倉昌男氏が残した最大の功績だと木川氏はいう。
小倉イズムは、このように同社の歴史上「画期的なイノベーションを起こし、それが顧客に支持され、競争に勝ってきた」という事実とセットで語られることで何より説得力を持つ。銀行出身の木川氏は、ヤマトグループに来て、こうした歴史を徹底的に勉強したという。そして折に触れスキー宅急便のエピソードなど歴史的出来事を語っている。「小倉さんの言葉は本質なので、私はそれを基本的に継承する」という表現にも歴史に学ぼうという姿勢は表れている。また管理者層が歴史の伝承役になるための教育をやりはじめたのも、理念浸透において歴史を語る重要性を認識しているからなのだろう。