なぜ一流の人は、多忙を極めても余裕があるのか。その違いは、脳と心の使い方にあった。精神科医と心理学のプロが教える。
「ゆっくり、はっきり」と話すよう意識する
小さなことで腹を立てやすい、四六時中イライラしている、忙しさや緊張でパニックに陥る……。そんな器の小ささは、どうしたら改善できるのか。精神科医の西多昌規さんはこう提案する。
「まず、自分の姿を客観視するクセをつけること。周りからどう見られているかを想像すると、冷静になれるものです。それでも収まらないなら、作業や行動を停止してコーヒーを飲みにいくなど小休止を入れるか、深呼吸をするのもいい。興奮を鎮める副交感神経が優位になって気持ちが落ち着きます」
商談など大事な場面で焦りやすいのは、いわば脳のクセ。直すのは諦めて、「ゆっくり、はっきり」と話すよう意識するといい。余裕がある印象を与えるばかりか、自分の話に耳を傾けてもらいやすくなる。しかも、相手にもゆとりが伝染し、コミュニケーションが円滑になるなどいいこと尽くめだ。
「仕事が重なったときにパニックに陥りやすいなら、脳のワーキングメモリーが容量オーバーになっていることもある。ワーキングメモリーとは、『ちょっとの間だけ覚えておく』記憶のこと。海馬が司る短期記憶とは異なり、いくつもの情報処理を同時に行えるのが特徴ですが、この機能が鈍ってくると、マルチタスクができなくなる。トレーニングで容量を増やすことは可能ですが、それにも限界があります。手っ取り早い対処法としては、一度にあれこれやりすぎないこと。優先順位をつけて後回しにできるものは、いったん頭から消すといい。メモに書き出しておけば、一時的に忘れても困りません。また、寝不足がワーキングメモリーの大敵であることも研究によりわかっています。十分な睡眠は容量を増やすことにつながるのです」