給料ランキング断トツ最下位の農業の現状はどうだろうか。農協勤務の清水栄一さん(仮名)は語る。

500円割れも!安すぎる農家の平均時給
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500円割れも!安すぎる農家の平均時給

「最近、都市のビジネスマンが中途で退職し、農家になろうとする話をよく耳にするようになりました。これはまず成功しないですね。農業は植えれば、何もしなくても自然に作物が取れるような簡単なものではありません。『農(の)ギャル』なんてものが注目されていますが、私は心底彼女たちが嫌いになりました。当初、若い女性が農業を始めると聞いて、すごくいい話だと思うが、まさか田植えと稲刈りだけをして、それが農業だと言い出すことだけはないよな、と周囲に話していたのです。しかしテレビに出る彼女たちは、田植えと稲刈りだけしかやっていません。これでは、農業ではなく、農業体験です! 家庭菜園のほうがまだ労力が必要です」

清水さんは都市部においてファッション感覚で農業を取り上げるマスコミに対して強い憤りを示す。

「農業だけで年収1000万円に達する人はほとんどいません。農業の大まかな時給は400~700円程度です。多くの農家が訴えているのはその地域の最低賃金額は欲しいということ。現状ではほとんどの農家が兼業農家なので薄給でも成り立ちますが、農業だけで食べていくことは到底難しい。農業だけの所得をみれば7割ぐらいが年収100万円未満です」

農業をこれ以上続けたところで生活を成り立たせることは難しい。もはや何のために農業を続けていくのか、収入の面からだけでは説明がつかない。

「先祖伝来の土地を守りたいってことはありますね。ただし、どうせ農業は自分の代で終わらせるのだから大して儲からなくてもいいという気分も同時に持っている。また、誰かが集落で耕作を放棄すると、その土地が雑草でボーボーになって害虫が発生してしまう。周りの人に迷惑をかけるわけにはいかない」

農業の現状は想像を絶する状況が広がっている。

※すべて雑誌掲載当時

(小原孝博、小倉和徳=撮影 編集協力=佐藤ゆみ)