脱サラ農家、危険な介護職、まだまだ安泰な弁護士……混迷する日本でも通用する仕事のカタチを徹底ルポで大検証!
<strong>ケアリッツ&パートナーズ社長 宮本剛宏</strong>●1979年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業。日清紡、ITコンサルティング会社を経て、ケアリッツ&パートナーズ設立。新しい介護のあり方を模索する。
ケアリッツ&パートナーズ社長 宮本剛宏●1979年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業。日清紡、ITコンサルティング会社を経て、ケアリッツ&パートナーズ設立。新しい介護のあり方を模索する。

「逃げ場のない訪問介護の現場は危険と隣り合わせです。80代の女性のもとへ、ヘルパーが伺ったときのことです。驚くべきことに50代の金髪ロン毛の男性が、全裸で怒鳴りながらリビングルームに仁王立ちしていたのです。聞けば、その人は、その女性のご子息で、学校を卒業して以来30年間無職のニート生活。母親の年金を盗み、暴力を振るうなど問題を起こしていたそうです」

東京都内で訪問介護事業を営むケアリッツ&パートナーズ社長・宮本剛宏さんは、神妙な顔つきで自身の手がける事業について解説する。ハローワークの求人を参考にすると、常勤ヘルパーの給与は大体18万円くらいからスタートし、大卒の初任給以下で、体力勝負をしなくてはならない。介護の現場は3K労働の典型のような印象を与える。

「きつい介護の現場から、より給与の高い仕事を求めて介護業界から他業界に転職しようとする人も多い。人手は常に足りない状況です」

介護業界は、行政との結びつきも強い。例えば介護が必要になると、地方自治体から介護認定を受けることから始まる。

「介護事業を公共サービスだと考えることには、いい部分と悪い部分があります。国の補助が受けられなくても、必要だと感じたらボランティアでも仕事をしてあげようという人がいる一方で、必要な知識を得る最低限の努力すらしないケアマネジャーやヘルパーも数多くいます。報酬額が国によって定められていますから、サービスの質が問題にならないのです。お客が必要とする付加価値の高いサービスを提供できるようにしない限り、介護業界の給与水準が低いままなのは、ある意味仕方がない。介護の現場は、危険があるにせよ、基本的には単純な作業の繰り返しですから」