――今後、成長が見込める領域は何か。

【川崎】3Dソリューションに期待している。3Dプリンターは産業系、ビジネス系、コンシューマー系の3つに分けられるが、我々は産業系とビジネス系に特化して、ソフトと組み合わせて提供していく。その一つとして、キヤノンの「MR(ミックスド・リアリティー=複合現実)」技術と組み合わせて、製品開発に活用してもらうサービスを始めた。

MRは、現実世界の映像と3DデータによるCG画像を重ねて仮想現実をつくる技術。たとえばキッチンのリフォームをするとき、MRでキッチン空間をつくり、3Dプリンターでつくった水道の蛇口などを加えて顧客に直接手に触れてもらえば、より具体的に完成像を把握できるだろう。また、医療分野では昨年、AZE社を買収した。同社は、MRIやCTで撮ったスライス(物体を輪切りにした)データを三次元化する技術に強みを持っている。これをクラウド型の画像管理システムと融合することで、より付加価値の高い医療ソリューションを提供できる。3Dソリューション事業は昨年から本格的にスタートさせたばかりだが、おもしろい事業に育つのではないか。

――「Beyond JAPAN」の意味は?

【川崎】2つの意味がある。一つは、海外の優れた商品やサービスをいち早く見つけて日本のマーケットへ流通させること。もう一つは海外への展開だ。海外には現地のキヤノン販社があるため我々がキヤノン製品を売ることはできないが、ITソリューションなどの独自事業は展開可能だ。とくにアジアの成長は魅力で、昨年はタイで日系企業にITサービスを提供している現地企業MAT社の株式を取得した。いまは海外売り上げが4%だが、いずれは1割を目指したい。

キヤノンマーケティングジャパン社長 川崎正己
1947年、神奈川県生まれ。69年一橋大学商学部卒業後、キヤノン入社。キヤノンU.S.A.、キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)、キヤノンコピア販売へ出向。2001年キヤノン販売取締役、その後常務取締役、専務取締役などを経て09年より現職。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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