松下氏によれば、コンパを通じて部下の適性を見極めることもできるという。

「アイツはふだん口数が少ないけど、強い意志を持っているなとか、こういう面が得意なんやな、といった意外な一面を知ることができます。日ごろは目の前の仕事に追われて、一人ひとりの社員とじっくり話をする機会が少ないですから」

コンパで把握した部下の適性を勘案して、新たなアメーバ組織を編成する際のメンバー選定にも使う。ふだんから段取りがよい人よりも、内に秘めた部分を持つ人のほうが、「アメーバリーダーに抜擢すると真価を発揮する」とか。

ただしコンパは、社外の人とは実施しない。生産部門の場合は「協力会社」と呼ばれる取引先が多いが、そうした相手とも行わない。これは馴れ合いを防ぐ意味もあるようだ。

懇親目的の飲み会は、組織の壁を乗り越える役割も期待されるが、「生産の場合は、壁というよりも、他部署と競い合うことが多い」という。

松下氏はこう振り返る。

「私が若いころ、みんなが必死に作った製品が出荷できず、他部署の製品が先に出荷されたことがありました。あのときは、アタマにきて『みんな帰れ!』と叫んだものです。その後にコンパをやって、『あのときは悔しかったな。今度はこういう手順でアピールしようや』と次々にアイデアが湧いてきた。酒の席で本音を語ると、そんな知恵も出てくるのです」