朝の過ごし方は、仕事を引きずらないため、夜とは違って十人十色だ。今回、プレジデント編集部では各社エースの朝の過ごし方に密着取材。その多様さから、仕事に対する姿勢も見えてきた。

17時退社を貫くのは、次世代へのメッセージ

リクルートは徹底した能力主義で知られるが、ブライダル情報誌「ゼクシィ」の編集長、伊藤綾さんはその象徴といえる存在だろう。

契約社員から正社員に登用され、32歳で編集長に抜擢。その後、育休による2年のブランクを経て、再び、編集長に返り咲いた。

4歳になる双子の子育てと仕事の両立のため、現在は10時から17時の勤務。編集長という立場では異例のことだが、「長時間労働から脱却して、次世代にバトンを渡したい」との思いから17時退社を宣言したのである。夜中まで働いていた出産前に比べると、勤務時間は1日5~6時間も目減りしたが仕事量はむしろ増加。その中で数々のヒット企画を生み出し、社内外で高評価を得ている。

「親」から「編集長」の顔になる前、必ず自分のためだけに使う時間を設ける。たったの20分だが、これがあることで頭の切り替えができ、仕事の効率も上がるという。

そんな伊藤さんの時間術は、「余白」をつくることによる効率化だ。出社前の自分時間はその最たるもの。9時30分から9時50分まで20分間、喫茶店に行き、コーヒーを飲みながら新聞や本を読んだりウェブニュースを見たり、情報をインプットする。リフレッシュ効果を高めるため、毎日、場所を変えるのもポイントだという。

「家庭は家族を大事にする時間で、職場は仕事や部下を大事にする時間。その間に、わずか20分でも自分を大事にする時間を挟むことで、頭が切り替えられる。仕事の効率もよくなるので、私にとって大事な朝活動といえます」

午前中のスケジュールでも、毎週水曜日の10時から11時までをあけている。これもやはり、余白時間による効率化だ。

「午前中は会議や来客など席に着く暇がないほどですが、もし、トラブルがあったときにはこの時間を使って相談にのれる。もっとも、そう頻繁にはトラブルが起きないので、この時間を使って3年後、5年後といった中期的な視点で仕事と向き合う。いわば、自分とのミーティングタイムですね」

人と会う約束がある場合には、40分前アクションが基本。アポイントの40分前に現地に着き、街を歩いてマーケティングをする。どんな人たちがどんな表情で何をしているのか。雑誌の企画ではこの肌感覚の情報が生きてくる。

「短い勤務時間の中でも、小さな時間を活用すれば視野が広がることがわかりました。ときにはアポの前に急いで校正紙を読まなければならないこともありますが、40分を確保してあることで作業できる。スケジュールにゆとりを持たせることで、業務の流れがスムーズになるのです」