一方で、仕事にかかる時間削減の工夫もしている。好例が打ち合わせや部内会議の時間。出産前は1時間費やしていたが、現在は30分に短縮した。

出社後、席に着くなり部下からの相談やイベントの打ち合わせなどに追われる。ダラダラしないよう、打ち合わせも30分と決めて集中してこなしていく。

「終わりの時間が決まると、人はそれに向かって調整をするので、30分でも成果は出せる。勤務時間も同じこと。残業しても終電には乗ろうと頑張るじゃないですか。私にとっては、17時が終電時間。それに向けて仕事をすれば終えることができるのです」

総勢60人もの部下との関わり方も、時間より密度にシフトした。校正紙のチェックは集中できるよう別室で行うが、この記事は素晴らしいと思ったら、その場で担当者に電話をして直接激賞する。メールを打つよりも気持ちが伝わり、時間も短縮できる。帰宅後、家事をしながら思いついたアイデアは熱が冷めないうちにすぐ電話して伝える。これも密度を高めたコミュニケーションの一環だ。

「部下の子たちには、『残業してパソコンに向かうだけでは新たな発想は生まれないよ。週1回でも定時に仕事を終える段取りをつけて、街に出てごらん』と言っています」。そうやって時間をつくれば友達や家族と触れ合えて優しい気持ちになる。その優しさは企画に反映される。たとえば、「結婚式前夜に花嫁さんがぐっすり眠るにはどうしたらいいのだろう」といった発想は、オフの時間から生まれたものだという。

「私にとっては、子供と過ごすことが優しさを生む時間になっている。この時間があるからこそ、今までにない企画やアイデアが生まれるのです」

●伊藤さんの1日

6:30 起床、朝食準備
7:00 子供の入浴
7:30 朝食
9:00 子供を保育園へ
9:30 喫茶店などで20分間の「切り替え時間」ここでコーヒーを飲みながら、ニュースチェックなど。母でも編集長としてでもなく、自分のためのインプット時間を
10:00 出社。接客、ミーティングなどほぼ打ち合わせに費やす
12:00 打ち合わせしながら昼食
13:00 ゲラ読み、社内外の打ち合わせなど
17:00 退社
18:00 子供のお迎え
18:30 帰宅、夕食準備
19:30 子供と夕食
20:00 子供との時間
21:00 子供就寝。その後に洗濯や翌日の準備
24:00 就寝

(工藤睦子=撮影)
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