朝の過ごし方は、仕事を引きずらないため、夜とは違って十人十色だ。今回、プレジデント編集部では各社エースの朝の過ごし方に密着取材。その多様さから、仕事に対する姿勢も見えてきた。
浅井さんの受講する「復興プロデューサーカリキュラム」の教室は、東京駅近くの新丸ビルにある。来年3月まで、ほぼ毎週火曜日の朝に開講されている。

「丸の内朝大学」といえば、社会人が出勤前に通える講座として有名だ。講座内容はバラエティーに富んでいるが、ひときわ目をひくのが、「復興プロデューサーカリキュラム」。東日本大震災で打撃を受けた東北の農家を支援するための企画を考え、実行するプロデューサーを育成するという講座である。真剣な気持ちで臨む受講生たちに交じって講義を聞いているのが、キリンCSV推進部の浅井隆平さんだ。

「CSVとは、社会と共有できる価値の創造を意味します。震災後、この部の中で“絆プロジェクト”というものが発足しました。3年で60億円をかけ、東北の復興に会社をあげて取り組んでいく予定です」(浅井さん)

最初は「壊れたものを元に戻す」「そのためにお金を出す」といったハード面での直接的な支援だったが、現在は第2ステージとして、復興を担う人材育成というソフト面の支援に移った。浅井さんは丸の内朝大学で農業ビジネスについて学びながら、週の半分は東北に出張し、東北大学で行われている農業従事者向けの講座にも出席する。水産加工会社に販路拡大のアドバイスをしたり、「復興イベントを打つにはどうすればいいか」という相談にも乗る。復興プロデューサーの卵たちと、東北の農家を引き合わせる使命もある。

とはいうものの浅井さん自身、今の部署に配属になって3カ月足らず。まだ手探り状態だ。ただし、時間の使い方は明らかに変わった。

「入社以来9年間は業務用営業でした。いわば飲食店のオーナーの右腕となって支援する仕事です。必然的に、夜はアルコールを摂取していました」と浅井さんは笑う。その後、横浜赤レンガ倉庫に出向して、4年近く商業施設の運営に携わった。ここも営業時間は夜11時まで。酒を扱う仕事である以上、夜遅くなるのは宿命だったかもしれない。それが一転した。

今や朝大学のある日は5時半起床。6時に家を出て、7時15分から1時間の講義を受ける。その後、9時近くまで受講生たちと情報交換。9時半に出社し、その後は通常業務というスケジュールだ。最初は早起きがつらかったと言う。

「今までこんな朝早い時間に頭をフル回転させたことはありませんでした(笑)。でもそのおかげで、会社に着くころにはテンションがすごく上がっているんです。だからすぐ仕事に打ち込める」