朝の過ごし方は、仕事を引きずらないため、夜とは違って十人十色だ。今回、プレジデント編集部では各社エースの朝の過ごし方に密着取材。その多様さから、仕事に対する姿勢も見えてきた。

役員を交えて早朝ミーティングも

ヒルズマルシェは、アークヒルズで毎週土曜の朝10時から開催されている。田中さんは7時から設営を始め、出店者たちの搬入の手伝いをし、9時半に朝礼、10時のオープンからは販売の手伝いと、八面六臂の活躍。

ビジネスマンにとって土曜の朝は、思い切り寝坊できる貴重なひとときだ。だが森ビルのタウンマネジメント事業部に勤める田中巌さんは、土曜も普段と変わらず5時に起きる。森ビルが運営するアークヒルズでは毎週土曜に「ヒルズマルシェ」という市場が開かれており、田中さんはその運営責任者の一人だ。テントの設営などの準備が7時頃から始まるため、6時半には家を出る。

田中さんは「タウンマネジメント」という自分の仕事を、次のように説明する。

「森ビルはアークヒルズや六本木ヒルズのように、ビルを建ててテナントに貸すという不動産業をしています。でも、都市を魅力的にするためにはそれだけではなく、完成後も街を育んでいかなければならない。人と人、人と街をつなぎ、育てるのが私の仕事です」

この夏、アークヒルズには「アークヒルズサウスタワー」という新しいビルが建つ。このプロジェクトでは、溜池山王駅から六本木一丁目駅まで、アークヒルズを経由して歩道でつなぐ計画もある。オープンから27年目の今も、成長を続けている街なのだ。

「ヒルズマルシェ」は、そんな街の魅力を高める取り組みの一つ。都心にいながら、生産者からじかに新鮮で安価な農産物が買えるとあって、近隣住民にも大好評だ。

実は田中さんは、前の部署では残業がとても多かったという。

「プレゼンに次ぐプレゼンの毎日で、昼間は動き回っているから、資料づくりはどうしても夜やるしかない。でも納得のいくものができないと、深夜まで作業することもしばしばでした」

そこで昨年の異動を機に、朝型に切り替えた。

今は、ヒルズマルシェのない平日の朝も、「ヒルズブレックファースト」の運営をはじめ、「朝オススメの会」「みなとフューチャーセンター」などの各種イベントや勉強会に出席することが多い。あえて早朝に重要な打ち合わせを入れることもある。

「ある新規プロジェクトについて役員に説明するとき、朝一にアークヒルズでミーティングを開催したことがあります。朝なら多忙な役員も比較的時間を取りやすく、自宅から直行できて移動時間の節約にもなるんです」

田中さんのオフィスがあるのは六本木だが、わざわざ赤坂のアークヒルズに来てもらうのは、田中さんに「仕事は“どこで”するかが重要」という考えがあるからだ。

「アークヒルズについて話し合うなら、やはり360度、その空間に身を置いたほうがいい。四方を壁に囲まれた会議室で議論していてもなかなか煮え切らない」