業績好調日本企業、「人材乏しい」
国内市場が縮小する中で、海外市場に活路を求めてライバル企業としのぎを削る日本企業。しかも、欧米企業だけではなく中国、韓国や新興国の地元企業も台頭し、グローバル競争は年々激しさを増している。
作れば物が売れるという時代は終わり、今は商品の企画力、開発力など市場のニーズを敏感に感じ取る感性と瞬時に対応できるスピードが求められている。
SMBC日興証券は、東証第1部上場企業の2015年度3月期の純利益は前年比3.5%増の26兆5000億円前後になり、過去最高を更新すると推計している。いうまでもなくその牽引役は、海外で稼ぐ電機、自動車をはじめとするグローバル企業だ。一見、日本企業はグローバル市場の戦いに成功を収めているように思える。
だが、それは錯覚にすぎない。
日本企業の海外事情に詳しいグローバルビジネスコンサルタントの白藤香氏はこう指摘する。
「円安によるマクロ的な要因で財務状況が好転しているだけにすぎない。はっきり言って円安という仕掛けられたバブルであり、円安の恩恵を剥ぎ取ったらほとんどの会社はイーブンかマイナス。グローバル市場では欧米企業に追い抜かれ、日本企業のシェアは1990年代よりもシュリンクしている」
なぜそうなってしまったのか。
▼日本「2:6:2」、英米「5:3:2」の落差
その根本的原因は、欧米企業に比べて経営能力を兼ね備えた人材が組織全体で大幅に不足しているからだと言う。
「日本人は非常に優秀で、教育レベルも高い民族だが、いったん海外のビジネスの現場に遭遇すると、市場戦略、専門性、組織と人のマネジメントすべてにおいて欧米のビジネスマンに比べて見劣りする。その原因を突き詰めていくと日本企業内部に能力が生かされない構造が潜んでいる」(白藤氏)
白藤氏が日本人の経営能力を示す1つの証拠として提示するのが図だ。OECDや世界銀行のデータなどをもとに英『エコノミスト』誌が分析した日本と英米企業の能力層分布(データを白藤氏が加工)だ。
「経営能力層:マネジメント層:一般層」が、英米では「5:3:2」であるのに対し、日本では「2:5:3」になっている。
一般的に会社を引っ張る優秀な人が2割、6割が普通の人、2割が働かない人の割合で構成される「2:6:2」の原則というものがあるが、『エコノミスト』誌が指摘した日本企業の「2:5:3」はそれとほぼ同じ分布になっている。ここで「一般層=働かない社員」と言うことはできない。だが、トップ層の人材は英米では「5」(経営能力層)である一方、日本では「2」(優秀な人)という格差はあまりにも大きいと言わざるをえない。