知っていそうで、意外と知らないモノの原価。数字のわかる大人の嗜みとして、知っておきたい飲食店の利益構造を飲食店コンサルタントの齋藤俊成さんに解説していただいた。
昨年末、高額のチャージ料などを請求されボッタクリだと利用客がツイッターに伝票の写真を添えて投稿したことから、店に批判が集中。運営元が謝罪し、当該店舗の閉店という騒動はまだ記憶に新しい。同じく昨年末には、某評論家が「『獺祭磨き二割三分』の1合3000円という値付けが適切かはなはだ疑問。便乗商法か」といったツイートをしたところ、そんなことはないだろう、とこれまた批判の的にされた。
そもそも飲み屋の原価とはなんだろう? 大手飲食チェーンに勤務後、現在は飲食店のコンサルタントを行う齋藤俊成さんにお話をお聞きした。
「飲食店の場合、原価は基本的に材料費として考えていただいて結構です。
まず、一般的な飲食店の利益構造から簡単に申し上げます。それぞれ売り上げに対しての割合ですが、メニューの材料費すなわち原価が約30%。次に人件費がやはり約30%。水道光熱費や販促費用、クリーニング代などの諸経費が約12%。店の賃料が約10%。減価償却費10%。残りの約8%が利益です。この8%をとるために、どうするかが問題となるわけです。
今はずいぶん変わってきてもいるのですが、これが『FL60』(F=food〈原価〉、L=labor〈人件費〉の合計を60%以内でコントロールするという意味)と呼ばれる1970年代にアメリカからチェーン店の指標として導入された考えです」
前述の獺祭の件でも「その獺祭の価格は1升2万円以上する。つまり、1合で2000円以上するのだから3000円は原価率67%。むしろ良心的ではないか」という書き込みに同意する意見が大半であった。
では、一般の飲食店の価格はどうやって決まるのだろう。
「店をつくる際はまず売り上げ予測から始めます。売り上げ=客数×客単価です。高級店ですと、ゆったりとしたスペースで客数は少ないが客単価を高く、大衆店はこの逆で、値段が安いぶん、回転を上げて客数を増やすというように、坪当たりの売り上げから逆算してメニューの価格設定をします。東京郊外で月の坪当たり売り上げが15万円でまあまあ、20万円だと優良店といわれます。