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チェーン店の原価の目安(PIXTA=写真)

値ごろ感も重要です。おつまみ300円の店で、原価1000円だからといって1杯3000円のお酒は売りにくいでしょう。原価率30%と適正でも、売れなければ意味はありません。

原価率を下げることが儲けのすべてのように誤解されがちなのですが、そういうわけではなくて、個人経営の飲食店の場合なら、原価率を下げるよりも粗利額をいかに確保するかということのほうが重要でしょう。

例えば原価が100円のものを300円で提供すれば、原価率は33%ですが、粗利額は200円。一方、原価が1000円のものを1500円で提供すると、原価率は67%ですが粗利額は500円。正直、原価率なんてどうでもよくて、いくら儲かるのかを重視しています」

では、客としてコスパのよい商品はどんなものなのだろう。図は我々が日ごろ利用するチェーン店の原価の目安である。

やはり「ビール」は原価率が高く、○○割りと言われるものの原価率は低い。スーパーでビールの値段を知る我々としては、同じものに3倍(原価率33%)の金は払わないだろう。というわけで、店側はビールの価格は抑えざるをえず、儲けは少ない。ビールばかり注文する客はあまり歓迎されないわけである。

「酒類は小売値と仕入れ値の差があまりなく、飲み屋だからといって、それほど安く仕入れることはできません。店は儲からないから売りたがらない。ビール離れといわれていますが、当然ともいえます。店としてはサワー推しなわけですから」

店側からすると、「集客商品」と「儲け商品」があると齋藤さんは続ける。

「『集客商品』とはマクドナルドのハンバーガー、吉野家の牛丼など、店を代表する商品です。看板メニューなので下手なものは出せませんから材料費は高くつく。一方で、お客様を集めるための商品ですから、価格を高く設定することもできません」

例えば、牛丼の並盛は生肉を約80~90グラム使っているが、100グラム100円程度の肉は仕入れているという。ファストフード店のチーズバーガーの原価率は70%、焼き肉チェーンの主力商品であるカルビや牛タンも60%程度といわれている。それで儲かるのだろうか?

「彼らの商売のポイントはそこにはありません。原価の安いポテトやドリンクなどの『儲け商品』であるサイドメニューとのセット売りにすることで、トータルの原価率を下げて稼ぎたいと思っているのです」

駅の立ち食いそば屋などでは、そば単体も天ぷらなどの揚げ物も原価率は30%程度だが、天ぷら1枚乗せても人件費も客の滞在時間も変わらない。であれば、トッピングの追加で客単価を上げて、粗利額を増やそうというのが狙いである。

コスパのよいチョイスの目安のひとつが「本日のおすすめ」メニューだと齋藤さん。

「店の評判、リピーターの獲得も兼ねているので、原価率が高い。つまり、よい素材のものが多いといえます」

(矢野貴之=構成 PIXTA=写真)
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