大家族で育った人材が注目される理由
チームワーク力と言えば、協調性や自分の主張を抑制し、多数に同調するイメージを想像しがちであるがそうではない。携帯電話会社の人事担当者は「単なる迎合ではなく、チームの中で自分の果たすべき役割を持ち、仲間と共に目的を達成できる人」だと言う。あるいは「個々人が高度の専門性を持つプロ集団の一員としての自覚を持っている」(建設)といった積極的な意味合いで使っているのが特徴だ。さらに自動車会社の人事担当者は「周囲の話に耳を傾け、積極的に学び取ろうとする意欲を持った人」だ。
コミュニケーション力は学生に限らず、今では社会人全体に欠けている能力の一つであるが、その意味や使われ方は企業によって違う。鉄道会社の人事担当者は「愛想が良いとか人あたりが良いというだけではダメだ。相手にどう伝えるのか、論理的思考力に裏打ちされた説明能力のある人」と言う。顧客先との打合せや社内プロジェクトのメンバーとの意思疎通が不可欠な情報通信業の場合は「単なるメッセンジャーではこの仕事は務まらない。第一人称の立場で自分はどうしたいのか、自律性を持って顧客や社内の人間と会話や議論ができる人」といった主体性を重視する。
同じように自社のビジネス的視点からチェックしている企業も多い。たとえば旅行業の人事担当者は「自分が信じる価値を人脈・ネットワークなどあらゆる手段を使って、その価値を認識してもらうようにする人かどうか」を見ているという。
また、別の旅行業の人事担当者は「旅行業はあらゆる世代がお客様だ。世代を超えて若い人から老人まで相手の立場を尊重しながら会話ができる人なのかどうかをチェックしている。そのために核家族で育ったのか、あるいは小さい頃からおじいちゃん、おばあちゃん、親戚の人に囲まれて育ったのかを確認している。大家族で育った人のほうがどんな人に対しても自然体で対応できるし、仕事もできる」と指摘する。
ホテル業の人事担当者は「ホスピタリティ(心のこもったおもてなしの心)を備えた人」を重視する。また、そのチェック手段として「企業説明会の受け付け時の対応や歩き方、面接時の控え室でのしぐさも見ている」と言う。
また、医師に対して営業活動を行うMR(医薬情報担当者)職におけるコミュニケーション力は「伝える力」に重点を置いている。製薬業の人事担当者は「面接では派手なパフォーマンスより、質問に的確に答え、必要な情報を確実に伝えることができるかどうかを見ている」と語る。