幹部人材に必要なリーダーシップ

リーダーシップ力は将来の経営を担う幹部人材候補である総合職に対して昔も今も求められている能力だ。入社後は人事異動によってあらゆる職種を経験させながら国内にとどまらず、海外の拠点などの現場でマネジメントができる人材の育成が行われてきた。

しかし、近年は現場の管理者の育成に加えて、高度化・複雑化するビジネスに対応する高い専門性を持つ知識労働者の育成も重要な課題になっている。リーダーシップの意味合いも単に部下を統率する力だけではない。総合商社の人事担当者は「仕事柄、様々な事業投資先のパートナーと組んで仕事をするケースが多い。その中で相手の信頼を勝ち得て、事業を切り開く能力がリーダーシップだ」と言う。取引先も含めた関係性の中での力の発揮が求められている。

自動車会社の場合も部品会社など様々な取引先と組んで仕事をすることが多い。人事担当者はリーダーシップ力のある人を「他者の価値観を尊重し、謙虚に他人の意見に耳を傾け、周囲を巻き込みながら仕事を進めていける人」だと言う。建設業の場合も下請け、孫請けなど多くの企業と連携しながら仕事をする。的確な情報に基づいた判断力が問われる。人事担当者は「他人から聞いた情報はあくまで他人の情報であり、決して鵜呑みにしてはいけない。自分なりに分析し、“他人の情報を自分の情報にする”作業ができ、最適解に導く力を持つ人」がリーダーと定義し、より高いレベルの能力を求める。

主体的行動力とは、チャレンジ精神と並んでビジネスモデルの変革期に直面する企業にとって重視する要素の一つだ。情報システム会社の場合、企業のシステム構築作業の過程で無理難題な課題解決を迫られることも少なくない。人事担当者は「困難に遭遇しても決して逃げない、自ら飛び込んでなんとか解決してやろうという意気込みを持った人」だという。

お堅いイメージの銀行業界でも主体的行動力は必要だ。大手メガバンクの人事担当者は「お客様のニーズや要望を聞き取り、言うことが正しいと確信したら、たとえ上司が異論を挟んでも、自分が正しいと思う顧客の意見を貫ける人かどうかを見ている」と語る。

総合商社の場合は相手先とのトラブルはつきもの。その時に相手に責任をなすりつけることがあってはならない。人事担当者は「何かトラブルが発生しても、すべてを自分の責任ととらえ、問題を解決するには自分に何ができるのかを突き詰めて考えて行動する自責型人材を求めている」と語る。また、やみくもに行動するだけではいけない。百貨店の人事担当者は「何をすればよいのか自らじっくりと考える思考力を持ち、それを実現する行動力のバランスを兼ね備えた人がうちには向いている」という。

さらに主体的行動力を高めるには失敗を前向きにとらえる人だと石油業の人事担当者は言う。「常に前向きに行動し、失敗したら解決するために勉強すること。生涯学ぶ姿勢を持ち続けられる人がほしい」。