日本で同じことが起きたらどうなる

シャルリー・エブドは2006年、ムハンマドの風刺画を掲載して、イスラム系団体に訴えられた。結果はイスラム系団体の敗訴。このことからもフランスで表現の自由が強く保護されていることがうかがえるが、同じような風刺画が日本で掲載されたらどうなるだろうか。

参考になるのは幸福の科学と講談社のバトルだ。91年、講談社は「フライデー」などで幸福の科学や大川隆法氏に対する批判キャンペーンを展開。宗教法人や総裁、信者が同社を次々に訴えた。訴訟は勝ったり負けたりだったが、注目は信者が「宗教上の人格権が侵害された」と訴えた複数の裁判だ。預言者の侮蔑に憤るイスラム教徒と構図が似ているが、宗教法人や総裁の名誉が毀損されても、それが信者の宗教的人格権を侵害するものとは認められず、いずれも敗訴した。

「個人や団体に直接損害が出ていれば、名誉毀損が認められて表現の自由が制限される可能性はあります。ただ、信者が侮蔑されたと感じて損害賠償を請求しても認められにくいのが実情です」(沢登氏)

日本でムハンマドの風刺画を掲載しても、法的リスクは低い。ただ、法的に問題なければ何をしてもいいわけではない。社会的に許される表現とは何か、一人一人が改めて考える必要がある。

(答えていただいた人=南山大学 教授 沢登文治 写真=時事通信フォト)
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