70歳以上の人の“昔話”をムービーに収め、ネット公開する「記憶の銀行」が話題だ。第二次大戦など、1940年以前生まれのお年寄りの失われゆく記憶を後世に残す試み。息子や娘、孫などが本人にインタビューし、You Tubeのように投稿する仕組みで、20 08年6月イタリアで始まって以来、静かな反響を呼んでいる。

名もなき労働者があの戦後復興の中、奮い立ち、会社の立ち上げに奔走し、社内で縁の下の力持ちとなり、過酷な労働環境に耐え、驚くべきパフォーマンスをあげた……。数十年前の話だが、決して色あせないリアルな武勇伝は、厳しい現代を生きるビジネスマンの心を打ち、働くヒントを教えてくれる。

語られるのはビジネスだけではない。親から祖父母世代の人々が、当時の世相や社会風俗、恋愛体験などを訥々と語る姿には、不思議な癒し効果がある。現在では7カ国で展開され、日本版も近々本格的始動の予定だ。

日本を含む8カ国で展開、アクセス総数129万件以上。1話5分程度の作品が世界で約2200本公開中。

日本を含む8カ国で展開、アクセス総数129万件以上。1話5分程度の作品が世界で約2200本公開中。

イタリア版では、国民的ビール会社の高齢OBが仕事の逸話を語るコーナーがある。大げさな社史ではなく、マイクロヒストリー。実は同社はサイトのスポンサーだが、「OB動画」には会社関係者以外の一般人も大勢アクセスするという。

ウェブ運営の「メモロ・ジャパン」のドルチーニ・チンツィアさんは言う。

「今では世界的に大きくなった企業も、最初は小さな小さな会社だったことが、こうした社員の肉声からわかります。それらの記憶を保存する動画は会社だけでなく、すべての人の財産なんです」

記憶の銀行は、CSR的な効果も大きい、とスポンサーからの評価も高い。

また日本版では、メモロのスタッフが企業のOBをインタビューしたり、メモロを企業のPRに活かすといったプロジェクトも進行する予定である。

http://www.memoro.org/